本当においしいぶどうを作る人/酒井正太さん

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本当においしいぶどうを作る人

ぶどう園

「山形の人たちはものすごく研究してるんだなと思います。あの豪雪や強風の厳しい自然の中で、ぶどうも桃もあれだけおいしいものを作るんですから。それにくらべると、福島は本当に恵まれた土地ですよ。」
福島のぶどう農家の酒井さんに初めてお会いしたときに聞いたこの言葉がとても印象に残っています。様々な生産者の方と出会いますが、畑に行く前から、食べる前から「この人の作るものは絶対に間違いがない」と、確信できる人がいます。酒井さんもその一人です。そんな酒井さんの畑にお邪魔しました。

ぶどう販売、営業マンはお客様

福島県伊達市梁川町、緑の豊かな山間部に民家が並ぶ細い通りは、「となりのトトロ」の風景です。車2台がすれ違うことはできる道ですが、お盆の時期には酒井さんのお宅兼直売所前が大渋滞を起こすそうです。お父さんがぶどう農家をはじめてから約40年、酒井さんは二代目です。毎年口コミでお客様が増え続けるぶどう畑、大半は宮城県からのお客様で、ちょっとドライブを兼ねてぶどうを買いに来ます。

「あら、お宅も来ていたの!」という会話があちこちで聞こえ、「こっちは今出ますよ」「次どうぞ」と、渋滞の交通整理もお客様同士でやってしまう和やかさです。「産直でぶどうを買ったのだけれど、やっぱり違うのよ! ここのじゃないと!」と、力説しながらぶどうを買っているご婦人も。酒井さんは「こっちも食べてみて」とぶどうを食べ比べさせ、手際よくぶどうを包んでいきます。

「そうそう、これ! これじゃないと!!」「あなたもこれ食べてみて!」とご婦人は得意げな顔で私にもすすめてくれます。「こっちは甘みがあるけれど、みずみずしくて酸味も甘みもあるのがこっち」と詳しい説明を聞いてから食べてみると、確かに、ご婦人のおっしゃる通り味が違います。そんな私の顔を見て、ご婦人はぶどうをたくさん抱えて、軽やかな足取りで満足気に帰って行きました。

酒井さんの育てるぶどうは20種類

酒井ぶどう園のぶどう

酒井さんの育てるぶどうは20種類。今年の夏は気温が高く雨が少なかったために収穫がとても早く、一番早い「あずましずく」は8月の第1週目からスタートしています。種無しのやわらかい果肉で甘みのある大粒の「あずましずく」の次は、巨峰よりも甘みが強く濃厚な味わいの「高尾」、さらに大粒で糖度の高い鮮やかなグリーンの「シャインマスカット」、すっきりした味で甘みと酸味のバランスが絶妙な「ピオーネ」…とメジャーどころが次々と出てきます。

他にも、市場ではほとんど出回らない「伊豆錦」「翠峰(すいほう)」「ベニバラード」などの珍しい品種を育てています。中でも「シナノ・スマイル」は栽培も難しく、酒井さんのところでも収穫が極僅かな晩生種。鮮やかなピンク色で、りんごの香りがするという甘いぶどうなのだそうです。例年は10月下旬頃に収穫される「シナノ・スマイル」ですが、今年は天気の影響で少し早まりそうだとか。味わえる日が今からとても楽しみです。頂いたぶどうを、ぶどう好きな方にお裾分けをしたところ「すごく美味しい!」「どこのぶどう?!」と大好評、あっという間になくなりました。
「ぶどうは、酒井さんのところのを」と。

私の秋の楽しみがまた一つ増えました。酒井さんのぶどう作りのお話は、また次回。

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