常に進化し続ける和菓子―その創業400余年の歴史に刻まれたもの

城下町、伊賀で江戸時代当初から400余年続く、和菓子の老舗「菓匠 桔梗屋織居」。正面の格子戸から店内に一歩入ると、高い天井と板の間が広がり、昔の商家にまるでタイムスリップしたような不思議な感覚になります。現在お店を継いでいるのは18代目の中村さん。1607年から続く、伝統的なお菓子と共に、現代にマッチングさせた新感覚の和菓子を常に編み出しています。

伝統的な和菓子に現代のニーズをプラスした「おかゆ大福」

店頭には職人が一つ一つ手作業で仕上げた商品が、生菓子と焼菓子を合わせ常に2〜30種類、色とりどりに並んでいます。中村さんは自ら手を動かし、お菓子を開発することに余念がありません。今の購買層に合う感覚を掴み、常に変化を重ね続けています。最近ではお年寄りや赤ちゃんのように嚥下が難しい方でも喜んで頂けるように「おかゆ大福」という、柔らかくて食べやすい商品を開発しました。介護の現場でも嚥下食として利用されており、このように古きよき伝統を守りながらも、常に時代のニーズにも応えています。

当たり前のことですが、江戸時代と現代では材料も違います。しかしながら、伝承の味を守るため、小豆は必ず国産のもの、栗は伊賀の栗を使用するなど、地産地消を心がけています。創業当時から伝わる押し型の中には、昔の疫病除けに使われていたかと思われる型がショーケースに陳列されていました。現代のコロナのような疫病が蔓延していた時代があったのだと、和菓子が歴史を物語るかの様です。

お店の人気商品をご紹介!

お店で1番の定番商品は「釣月(ちょうげつ)」。見た目は小さなどら焼きのようで、柔らかい粒餡が香ばしい皮に包まれています。名前の由来は伊賀が故郷である松尾芭蕉の小庵「釣月軒」から。幅広い層から人気の商品です。そして、とびきり可愛いこども忍者のイラストの焼印が刻まれた人気のお菓子は「伊賀のまめ助」。デザインは美大に進学されたお孫さんによるもの。和紅茶の餡がマッチし、もっちりした美味しいみるくまんじゅうです。伊賀流忍者のふるさとである地元のお土産にもピッタリですね。

桔梗屋織居のこれから

「和菓子で人を幸せにしたい」と言う思いが伝わってくる店主の奥様の優しい表情と、明るくてテキパキと働く従業員の方がとても印象的だった本店。これからも地元の方から遠方の方から、そしてお年寄りから若い方にまで桔梗屋織居の和菓子を召し上がって頂き、「美味しい」と思って貰える和菓子を時代を超え、これからも末長く作って行きたいそうです。既に19代目である息子さんは「KIKYOYA ORII」というローマ字に変えた店名で、餅菓子専門店を東京で営んでおられます。これからもこの様に次世代にのれんを託し、桔梗屋織居の美味しい和菓子の歴史が末長く刻まれていくのです。

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