江戸で花開く庶民の和菓子
「くず餅」といえばぷりんぷりんとした食感、独特の味わいに黒蜜ときな粉のゴールデンコンビの、和菓子です。夏前といえど、晴れた日となれば暑さ厳しい昨今ですが、そんな時、清涼感ある「くず餅」は、ほっと和む美味しさです。ところで名前が同じなのに関東と関西では別物といえるほどの違いがあるのはどうしてなのか?ご存知ですか?
日常、私たちが目にする和菓子のほとんどは江戸時代に確立され「くず餅」はお寺や神社の門前で売られるようになりました。当時、江戸は幕府の下、町民の文化が栄え、京都は宮中文化、茶の湯の文化が育まれ、東西の和菓子はそれぞれに花開きました。その頃の京都の和菓子といえば流行の最先端であり、江戸の人の憧れでした。何日もかかるほど離れた江戸と京都でしたから、江戸の人は手に入らない材料があれば別のものを使い、また量産できるように工夫し、親しみある和菓子を作りました。そのようなことから「くず餅」は関東と関西では名前は同じでも、全く違う物として誕生し、200年以上経った今も愛され続けています。今でもそうであるように参拝し季節の花を愛でて歩き疲れた後のお茶の時間やお土産に喜ばれています。
知らなかった!東西の違い
特徴としては関東は漢字では「久寿餅」と当てられ、見た目は乳白色、ぷりんとした食感と歯切れの良さがありお餅に近い重量感があります。これに対して関西は「葛餅」で、つるんとして柔らかくほのかな甘みと透明感があります。この違いは材料や作り方によるものです。関東は湯で練った小麦粉を1年以上、樽の中で寝かし、乳酸菌発酵させたものを蒸して作ります。独特な風味と弾力ある食感は発酵から生まれる味わいです。関西の葛餅は葛粉と砂糖、水を火にかけて練るだけで作れます。葛は紀伊山地に位置する吉野地方で栽培が行われていました。葛の根からとれるでんぷんを精製してつくられた葛粉は江戸時代中期以降から和菓子作りに使われるようになりました。特に近年は葛粉は取れる量が少なく希少価値が高いものです。どちらも黒蜜をかけ、きな粉をまぶしていただきます。季節的には涼感のある和菓子なので夏のもののようですが、常時販売されています。
意外と簡単!「葛餅」を作ってみよう。
工程は混ぜて蒸すだけ。材料、工程ともにシンプルで、自宅でも作りやすいです。
・葛は本葛粉を使います。葛粉はサツマイモのデンプンなどで作られているので本来の風味が出ないので価格はお高めになりますが、本葛粉をお勧めします。・以下のレシピでは練った後、蒸す工程を入れました。蒸さなくても固まりますが、蒸すことで味が均一になり食感が良くなります。・葛粉と水を練るときはゆっくり優しく練りましょう。
材料
◎葛餅
- 本葛粉:100g
- 上白糖:50g
- 水:200cc
(17㎝×14㎝×4.5㎝流し缶使用)
◎黒蜜
- 黒砂糖:50g
- 上白糖:50g
- 水:100g
◎きな粉:適量
作り方
<葛餅>
1.本葛粉を細かく砕きます。
2.鍋に砕いた葛粉と上白糖、水を入れて鍋底からよく混ぜ合わせます。
3.かき混ぜながら中火にかけて熱します。
4.固まりだし半分くらい塊ができたら火からおろします。なめらかな乳白色になるまで混ぜます。
5.水で濡らした流し缶に4を均等に入れ、20分間蒸します。
6.冷まします。
<黒蜜>
市販の黒蜜を使ってもよいですが、簡単に作ることができます。
1.全ての材料を鍋に入れて中火にかけます。
2.材料が溶けたら弱火にし混ぜ続けます。
3.ブツブツと大きな泡が立った後、小さな泡になります。とろみがつくまで煮詰めます。火を止め粗熱を取ります。
※火にかけすぎると、とろみがなくザラザラになるので、火を止めるタイミングに気をつけましょう。
4.濾し器で濾します。
葛餅は食べやすい起きさに切り、食べる15分前に冷蔵庫で冷やします。(長時間冷やすと固くなる)きな粉と黒蜜をお好みの量かけていただきます。
作りたての美味しさは格別!時間が経つと風味が落ちるのでその日のうちにお召し上がりください。ひんやりと冷やした葛餅。これからのシーズンに最適。お家で和カフェしてみませんか?
(写真・文 / ほし まさみ)