春の到来を告げるアスパラガス
アスパラガスの旬は露地栽培される4月から6月上旬くらいです。アスパラガスには細いもの、太いものと種類がありますがグリーンとホワイトの2色があります。色の違いで味や栄養価に違いはあるのでしょうか?
アスパラガスの原産地は南ヨーロッパからウクライナ地方だといわれています。土壌に塩分を多く含む海岸地域で紀元前から栽培されていたそうです。日本で栽培が盛んになったのは大正時代から。冷涼な気候を好むため北海道はじめ寒冷地で栽培面積が増え、特に北海道では缶詰のホワイトアスパラガスの輸出が好調となりました。近年、中国や台湾などで安価な缶詰生産が始まってから、輸出はほとんどされなくなりました。今、国内で最も流通しているのはグリーンアスパラガスです。茎が緑色で歯ごたえがよく、甘味があって風味も豊か。栄養価もあります。
所変わってヨーロッパではホワイトアスパラガスの方がメジャーで「春を告げる野菜」として愛されています。「野菜の女王」、「マドモワゼルの指先」、「王の野菜」、「食べる象牙」、「白い金」そんな呼び方まであるそうです。ヨーロッパの人々は新鮮な野菜を食べることが出来ない冬から、春になり土の中からにょきりと顔を出す瑞々しく柔らかく甘みの強いホワイトアスパラガス。暖かな季節の到来の喜びとともに味わうそうです。日本人が春の訪れをたけのこに感じる感覚のようですね。
グリーンとホワイトの違い
先ほどホワイトアスパラガスを〝たけのこに近い感覚〟といいましたが、ホワイトは土の中で栽培されます。まさにたけのこのように掘り出すのです。グリーンアスパラガスは一般的には芽が出るままにして栽培します。グリーンとホワイトは品種の違いではなく、栽培方法が違うのです。
ホワイトは芽が出る前に土寄せして(軟白栽培といいます)日光を当てないで栽培するので、葉緑素が作られず、白く成長します。盛土の上の小さなひび割れをみつけると、その下にアスパラが伸びてきているとわかり、やさしく土の中から取り出します。軟白栽培することで青臭さを減らし、やわらかくて優しい味わいのホワイトアスパラガスになるのです。
土寄せせず光を当てて栽培したものがグリーンアスパラガスです。日光をたくさん浴びて、光合成をさせて栽培するため栄養価が高く香りや味がしっかりしています。
品種の同じ2つは同じ栄養素が含まれています。
- アスパラギン(新陳代謝を促進して疲労回復効果を高める)
- ベータカロテン(免疫力を高める)
- ビタミンC(肌のきめを整える)
- ムチン(胃の粘膜を保護する)
- 食物繊維(便秘解消に役立つ)
栄養価は光合成をしているグリ—ンの方がやはり高くなります。旬の時期はどちらも同じで、露地栽培がされる4月から6月上旬くらいです。栽培法によっては9月まで収穫されます。春どりのほうが栄養価も高くおいしいです。
ホワイトアスパラガスに熱い視線
日本では栄養価が高く一般的に手に入るグリーンに対して、栽培に手間がかかり、価格が高く、傷みやすいため流通量が少いホワイト。ところが最近ではホワイトを料理に使うレストランや消費者が増えてきていることで需要が高まっています。それはヨーロッパで修業した料理人たちが積極的に使い始め、様々なメディアで紹介されていることが背景にあるようです。グリーンより甘味が高く、水分量が多い採れたての上品な味わいはホテルやレストランでの引き合いが多いため、希少な存在です。もし出合うことができたら、グリーンとホワイト、その違いをぜひ味わって確かめてみてください。
(文・写真/ほし まさみ)