きっかけは「さぬきひめ」との出会い
結婚当初は横山さんも、ご主人も会社勤めでした。ご主人の実家は農家でしたが、お二人が就農する予定はなかったそうです。しかしご主人が、香川県オリジナル品種のイチゴ「さぬきひめ」をテレビで知り「これや!これをやりたい」と言い出したときからお二人の人生が変わることになります。
当時横山さんは、農業だけで生活できないのではないかと不安で就農を決めかねていました。考えが変わったのは応募で参加したバスツアーです。訪れたイチゴ農園で、「さぬきひめ」を食べて感動しました。「もともとイチゴを食べるほうじゃなかったのですが、そのときに食べたイチゴが本当に美味しかったんです。こんな美味しいイチゴを作りたい!と思いました」香川県で栽培が始まってからまだ数年のことでした。「さぬきひめ」は、甘味と酸味のバランスが絶妙で、果汁が多くみずみずしい食感です。鮮やかな赤色で形が可愛くケーキ屋さんにも引き合いがあります。
横山さんが本格的に「さぬきひめ」の栽培に携わり始めたのは、ご主人が 1 年間農業研修を受けた後でした。当然横山さんは初めてのことばかり。JAや先輩農家の助言を受けながら試行錯誤を続けました。就農当初、一番大変だったのはパック詰めです。
「粒の大きさごとに選別して向きを揃えながら詰めていくのですが、重量を合わせることには特に苦労しました。当時は、詰め作業用の重量判別機をまだ持っていなかったんです。家庭用の計量器だったので、1粒ずつ調整するのに時間がかかりました。またイチゴの果実はとても繊細です。少しでも力を入れ過ぎると傷つき出荷できなくなってしまうので、持つ力の加減が難しく、何度も失敗を重ねながら覚えました」。
若い人のお手本になりたい
高齢化は進んでいるものの、西讃地域では県外から移住して農業を始める人や、地元で新しくイチゴ栽培を始める人もいます。横山さんは、若い移住者の見学や中学校の職場体験などを積極的に受け入れています。そして若い人のお手本になれるよう、自分たちが得た知識はどんどん伝えていきたいと考えています。「これからイチゴ栽培を始める若い人たちに楽しく仕事をしてもらえたらと思います。必要ない苦労はしなくていいですから」 。
イチゴとともに自分の人生も輝く
横山さんのハウスは、イチゴも人も快適に過ごせる環境づくりを心がけています。まずハウス内には音楽が流れています。これは近所の小学校からオルゴールの音楽が流れてきたときに、イチゴも音楽聞いたら気持ちよく育ってくれるのではと思って始めました。また毎日の掃除は特に気を配り、清潔な環境を保っています。そしてハウスの一角には木製のテーブルと椅子が並べられた休憩スペースを設けています。
「楽しくイチゴ作り!」をモットーにしている横山さん。楽しみながらイチゴ栽培を続けるにつれ、横山さん自身にも変化があったといいます。「もし会社員を続けていたら、変わらない人間関係の中で生きていたかもしれません。しかしイチゴ栽培を続けたおかげで、これまで出会えなかった人に会えることができました。本当にイチゴ農家になってよかったです」。前向きにイチゴ栽培に取り組むことで横山さん自身も輝く日々を送っています。