ご先祖様が導いた4代目への道/三豊市・矢野志保美さん

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家族の思いがひとつになって新たな道へ

香川県三豊市でレモンや中晩柑などの柑橘類を生産している矢野農園。経営するのは4代目である矢野志保美さんです。「柑橘を栽培する両親、祖父母の姿を見て育ち、収穫を手伝うこともあったとはいえ、まさか自分が経営することになるとは・・予想外のことでした」と話す矢野さん。6年前、お父様が亡くなられたときに姉妹で農園の今後についても話し合いました。「父が新たに手がけ始めていた圃場はさすがに手放そう・・」そんな話が出ていたところ、当時小学生だった息子さんが「それはやめて!とにかく続けてほしい!」とわんわん泣いて訴えたのだそう。そうは言っても、矢野さんはご主人の転勤に合わせて引越しを繰り返しながらの子育て中で、当時は岡山県に住んでいました。そして、家族で話し合った結果、母子で香川へ。ご主人は婿入りされ、週末は香川へ来て、農園の仕事を手伝うというかたちに落ち着きました。まさに家族一丸となって「矢野農園」の存続を決意されたのでした。

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全力で駆け抜けた6年間

失意の中、農園を継ぐことになった矢野さん。お母様が亡くなられた10年前から手伝うことはあったものの、「見て学べ。自分で考えろ」がモットーの父の側でやってきたことは、本当にごく一部だったのだと気付かされます。いわゆる「農作業」と「農園経営」は全く異なる知識・技術が必要でした。周りの方に聞きながら、試行錯誤を繰り返して歩んでこられたとのことです。その頃、農業改良普及センターから「みとよ若嫁ファーム」を発足するにあたり、入らないかと声がかかります。まだまだ気持ちにも余裕がない時期で、お断りするも「新規就農者が5人以上必要だから」と言われると断りきれず、所属することに。

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女性農業コミュニティリーダー塾など研修にも参加しながら農業経営の知識を学び、仲間とともにマルシェに出店するなど活動を続け、なんと今では「みとよ若嫁ファーム」の会長を任されているのです。「だまされたのよ〜」なんて笑ってお話ししてくださる矢野さん。農園を継ぐ立場も、会長の役割も、「この人に!」と思わせる矢野さんのお人柄が自然な流れを生み、さらには弛まぬ努力が積み重なり、実りに繋がっていることがわかります。

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父の残したメッセージ「かんきつ物語」

矢野さんが一人で農園を運営できている秘訣は「リレー栽培」。9月末に収穫する「極早生みかん」にはじまり、日南の姫、日南、田口早生、ゆら早生、石地、寿太郎、西南のひかり、べにばえ、文旦、紅まどか、不知火、はるみ、河内晩柑、メイポメロ・・5月まで順次選手交代していくのです。一部は、夏場も摘果みかんを出荷しています。こうした通年出荷できるスタイルは、お父様が残されたメッセージ「かんきつ物語」そのものなのです。お父様は生前、いつでも柑橘類がある暮らしを願い「かんきつ物語」のイメージをお孫さんたちにお話しされていたのだそう。矢野さんも知らなかった「かんきつ物語」。息子さんが泣いて残してほしいと訴えたというお話にも納得です。大学生になった息子さんは圃場の柵を作ってくれたり、頼れる存在に。戸惑いながらスタートした「みとよ若嫁ファーム」も生産・加工など女性目線のノウハウを共有し、子育ての相談もできる女性ならではのネットワークとして、今では矢野さんにとっても欠かせない大切な存在になっています。

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