地域に貢献し、地域に支えられ、力強く農業を営む/香川・小豆島 西口千里さん

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専業主婦からみかん農家への転身

結婚してから長らく専業主婦だったという西口千里さん。夫が家業を継ぐために夫妻で小豆島に移住してからは、一人で家庭菜園を楽しんでいました。あくまで趣味ではじめた家庭菜園。しかし、その姿をみた地域の人から「うちのみかん園地も使ってほしい」と声がかかります。高齢になり作業が困難になったみかん農家が、園地の管理を西口さんに託したのです。「やるかどうか、最初は悩みました。みかんを栽培するには、資材も揃えないといけませんから。でも、実家の父に相談すると”やってみたらいいじゃないか”と言われて、挑戦することにしたんです」。偶然にも、実家がみかん農家で、子どもの頃は収穫を手伝っていたという西口さん。「まさか、小豆島で私がみかんを栽培することになるとは思ってもみませんでした」と笑います。

西口

そんな西口さんを信頼してか、地域からは園地を預けたいという申し出が増え、栽培面積がどんどん拡大。「そこまでやるなら利益を取るほうがいい」という周囲からのアドバイスもあり、5年前に完全就農しました。託される園地のなかには、荒廃地になる寸前のものも多いですが、時間をかけて回復させ、出荷ができる状態にまで育ててあげてます。

西口

地域ぐるみのサポートが心強い

実家が農家とはいえ、農業未経験での挑戦。はじめのうちは、資材など重いものを持ったり、機械を操作したりするのにも苦労したそう。ただ、栽培で困りごとがあるたびに、農業改良普及センターやJAの職員に相談できる環境がありました。「この辺りは家族経営の小規模農家が多いので、農業の指導員も私たち一人ひとりをすごく気にかけてくれているんです。私がいなくても園地を見回りに来てくれて、異常が発生したら連絡やアドバイスをくれます。それが心強いですね」と西口さん。地域の農家も、一人で奮闘する西口さんに「肥料まいた?」など忘れないように声をかけてくれます。休日にはご主人も一緒に作業するとのことで、この日も「三連休のはずが三連勤になりましたよ」と笑顔で答えてくれました。頼れる人がいるという安心感が、一人の農作業へのモチベーションになっているようです。

西口

みかん栽培は、難しいからこそ面白い

現在はみかんのほか、キウイフルーツや野菜も含め、年間を通じてバランスよく作業ができるように、緻密な栽培計画を立てて栽培に励んでいます。みかんの品種は、小原紅早生、スイートスプリング、はるひめ、はるみの四種類。毎年12月になると、園地がいっせいに鮮やかに色づきます。ここからが、西口さんの繁忙期。収穫してトラックに積み込み、倉庫で仕分けをしたら間髪を入れずに出荷へ。周りからは「体を壊さないようにね」と気遣われますが、今では20キロの肥料をかつぐほど、力強く農業を営んでいます。

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「私たち個人農家は、どうしても大規模農家に押され気味。そこで、収穫したみかんを冷蔵しておいて、季節外の夏場に出荷することもあります」と売るための工夫も。地域の風土と気候を生かした露地栽培を行なっているため、品質のいいみかんを作るために、防除と肥料にも気を使います。とくに小原紅早生は栽培が難しいと言われる品種。時には失敗して落ち込むこともありますが、朱色に色づき味がうまくのったときの感動は大きいもの。あえて難しい品種に挑む面白さも感じているそうです。

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「夫が定年退職すれば、二人で作業ができます。そうなれば毎日手を加えられるので、今よりもっと効率的に栽培ができるはず。何より、気持ちが落ち着くと思います」と微笑む西口さん。一人で農業を営むのは難しいけれど、だからこそ助けてくれる人たちがいる。その喜びをかみしめながら、おいしい果物や野菜づくりに向き合っています。

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