女性でも一人で新規就農してみると/香川・坂出市 國重幸代さん

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農業という選択

「10年後もこの会社にいることが想像できなかった」もういいかな、と20年勤めた会社の希望退職に応募したという國重幸代さん。現在、香川県でナスやブロッコリーなどの野菜を栽培している農家さんです。ご実家が兼業農家だったものの、退職した当初は自分が農業に携わるとは思っていなかったといいます。いくつかの仕事を経験するなかで「一次産業に向いてそう」とアドバイスされたことをきっかけに、なじみのあった農業について調べ始めました。インターネットで情報を集め、就農希望者が農業について基礎から学べる香川県立農業大学校の門をたたきます。

國重

会社勤めからの農業への転身は、想像と違うことも多かったのでは? とたずねると「そう思って、入学前に農家でアルバイトをさせてもらったんです」と明るい笑顔で答えてくれました。若者や外国人実習生に混じって、実際の農家の仕事を体験したことで「農業をやっていく自信がついた」と言います。晴れて入学した農業大学校は1年制。座学や農家での実習体験を通して就農への準備を着々と進めていきました。当時お世話になった農家さんとは今も交流があり、何かと気にかけてくれる頼もしい存在です。

自分なりの農業

独立して5年目を迎え、ようやく自分のやり方が確立してきた國重さん。けれどやはり最初は戸惑うこともあったそう。「畑で作業をしていたら、女性が農業を始めたと聞きつけた人が見に来たりしたこともありました。」農業従事者の高齢化が進むなか、國重さんはまだまだ若手。ひとりで農家を営んでいくとなると、学校で身につけたことだけでは、解決できない問題や悩みも出てきます。そういったときに「アグリレディ」の存在は大きい、と話してくれました。

國重

「アグリレディ」とは、女性の視点と能力を生かした農業経営ができるように女性就農者の活動支援を行う香川県の取り組み。交流会や勉強会の場を設けて、お互いの活動状況や女性目線での農業への想いを語り合える場となっています。台所に立つことが多い女性は、消費者目線でどんな野菜が売れるかというのがわかります。くわえて、農作業でとってもマメに手入れをしているのも女性農家さんの特徴なのだとか。女性ならではの細やかさが農業でも生きてくるんですね。

國重

農業を始めると近隣の農家さん、行政担当者、農業体験に来る学生など、さまざまな人たちと関わるようになりました。自治体が定める認定新規就農者になったことで、若手ながら地域の農業委員も任されるように。なかなかプレッシャーも大きそう、と思いきや「先輩農家さんにとっては、まだ頼りない存在。でも期待されるように成長していかなくちゃ」と前向きです。

これからの未来も私らしく

「きれいな野菜が作れたとき。お客さんに、おいしかったわ、と言ってもらえたときが一番うれしい」と國重さん。スーパーの産直コーナーに並ぶことが多い國重さんの野菜たち。お客さんの声を直に聞けるのが励みになっています。

國重

「中学生の息子が高校を卒業するまでは、このまま頑張っていきたい。5年か、いや10年くらい。うーん、体力が続く限りは!」生き生きとした表情で、そのあとのプランも教えてくれました。「小さな家に田んぼが一枚か二枚。今よりもこぢんまりとね。そこで野菜を作って生活していくの」ときどき農作業を手伝ってくれる息子さんやその友人たちも農業に興味があるそう。彼らが何年後かに「農業をやりたい」となったら、近くの田んぼで一緒にできたらいいですね。いつかのアドバイス通り、自分のペースで営める農業が國重さんにはぴったりだったよう。國重さんの描く未来は、聞いているだけでわくわくしてきます。農業という選択がもたらした今の生活は、家族と仲間に囲まれ、さらに素敵な未来を育んでいました。

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