親子で、地域で助け合い、農業を未来へと受け継いでいく/香川・まんのう町 萩原理英さん

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稼ぐ農への挑戦

両親から引き継いだ1haのほ場で、ブロッコリーやキャベツなどを栽培している萩原理英さん。就農から約10年、持ち前の明るい笑顔とはつらつとした性格で地域を巻き込みながら、稼ぐ農業を実践しています。44歳で勤めていた会社を退職。人生の分岐点に立った萩原さんが選んだのは、就農の道でした。「小さい頃から親が農業をしているのを見て、手伝っていたからね。農地を維持するためには、自分が管理しないと。親は儲かる農業をやっていなかったから、ある意味、意地もあるのかも。私ならもっとできる!って」と萩原さん。就農当初は、見よう見まねで作業を進めて、徐々に効率的な方法を編み出していき、今では機械を活用して作業効率化を進めています。

萩原

メリハリあるアグリライフ

萩原さんは、大きな農業機械を使いこなし、露地野菜を栽培しています。減農薬栽培を行い、JAに出荷する際には栽培履歴を提出。厳しい検査をパスし、安心安全な作物を作ることを大切にしています。「面積が広いから無農薬は難しいけれど、安全性は間違いないんですよ」と胸を張る萩原さん。広いほ場を一人で管理するのは体力勝負ですが、そのプロ意識が作物を豊かに実らせています。そんな萩原さんの心の支えは、同じく農業を営む女性たち。時折、農業女子ネットワークのミーティングに参加して、情報交換をしています。作物はそれぞれ違いますが、情報交換すると刺激になり、何より会って話をすることが楽しい時間となっているそうです。

萩原

数年前、萩原さんのお姉さんも会社を退職して就農をしました。それ以来、2人で手を取り合い、助け合ってきました。「9〜10月が一番忙しいですが、毎日作業が続いたら、もう、今日はお休みしよう!と決めて一緒にランチに行くんですよ、自分へのごほうびに。雨が降ったらその日はお買い物デーになります。農作業をするときのスポーツウェアも一緒に買いに行ったりしています」と萩原さんはとても楽しそうに話します。作業をするときは集中して作業し、休むときはしっかり休む。メリハリのある日々を過ごすことで、農業への活力が湧き上がっているようです。

地域農業をもっと盛り上げたい

野菜を個人経営で栽培する一方で、米や麦に関しては、地域の人たちと共同で集落営農を行なっています。米の栽培にはコンバインやトラクターが必要となりますが、機械が高額のため、共同購入し法人経営する方法です。「これからの農業は、『うちの田んぼ』という所有の感覚から抜け出し、共有という、新しい考え方へ変わろうとしている。農地は地域で管理し、何かあったら「お互いさま」の寛容な精神で乗り越える。そして、利益をしっかりキープすることも大事」持ち前のコミュニケーション力で周りの人と力を合わせている様子が伝わります。

萩原

今の課題は、人を増やして法人を長期的に維持すること。同級生が定年になったら、1人でも2人でも会社に入ってもらい、農業の楽しさを知ってもらえたら、その人を中心に世代交代が進んでいくようにしていきたい。そんな萩原さんの想いが伝わったのか、地域の中には、定年後に嘱託として会社に勤務しながらも、心はすでに農業に傾いている人も、ちらほらと出てきている様子。今は無理に誘うことはせず、仲間になってくれるのを心待ちにしています。「農地の後継ぎ問題は、子育ての問題と一緒に感じる」と萩原さんは言います。

萩原

田舎で両親と同居していても、今は子どもを両親に預けずに外の施設に預ける人が増えています。親は親で、子どもに農業を手伝ってもらうことを考える前に離農してしまいます。「もっと親子のコミュニケーションがうまくできるといいんだけどね」と萩原さん。農地の管理が難しくなった時に、親が子に上手に頼ることができたら、子も親を放っておけず、引き継ごうと考えるようになる。そんな親子の形が、この地域でうまれることを願っています。

萩原

「これからはもっと女性も外に出ることが大切」「将来は、小規模でいいので野菜を作り続け、時には旅行に出かけたりしてリフレッシュする」そんなメリハリのある老後が理想なのだそう。そんな萩原さんのパワーみなぎる笑顔が、地域の未来を明るく照らしているように感じました。

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