薬味の定番、大根おろし
大根おろしは、日本の食卓に欠かせない薬味の定番です。みずみずしく、さっぱりとした爽やかな風味は、焼き魚やお蕎麦、卵焼きなどなど、どんな料理にも合い、美味しさを引き立ててくれます。
生の大根おろしには、消化をサポートしてくれる酵素が豊富に含まれていて、焼き魚の焦げに含まれる発がん性物質なども解毒してくれる働きがあります。ピリッとした辛みも魅力ですね。いつも料理に何気なく添えている大根おろしですが、辛かったり辛くなかったりすることがありませんか?
実は、大根は部位やおろし方、季節によっても甘さや辛さが違います。
春から夏に出回る春夏大根は、やわらかくて辛みが強く、秋から冬に出回る秋冬大根は、みずみずしくて甘いのが特徴です。
では、大根おろしの味は、「おろし方」では、どう変わるでしょうか?色んな大根おろしを作って、実際に食べ比べてみました。
大根おろしを部位とおろし方で食べ比べ
食べ比べに使った大根は、冬大根の宮重大根。上中下の3カ所に分けて、繊維に沿って縦に平行におろしたものと、輪切りにした断面側の繊維を断つおろし方の2種類で、甘さや食感・味の違いを比べてみます。
大根の上の部分
上の部分は水分が多く甘味がとても強いです。おろしたては、繊維に沿っておろした方はほとんど辛みを感じなくまろやかな味わい。繊維を断つようにおろした方は甘味もありますが、辛みがとても強く大根の爽やかな風味が感じられました。同じ部分なのに、おろし方でこんなにも辛さが違うのにはびっくりです!
大根の真ん中の部分
上の部分に比べて真ん中は、ふわっとしたやわらかい食感。繊維に沿っておろした方は辛みを少々感じるものの、甘味と辛みのバランスがとても良いです。繊維を断つようにおろしたものは、もう少し辛みを強く感じました。真ん中の部分は食感・水分・辛み・甘味のバランスが一番とれているように感じます。
大根の下の部分
下の部分は上の方に比べると水分はかなり少なめ。食感も繊維質な感じで硬めです。どちらのおろし方もかなり辛みが強いです。少々苦みも感じました。とっても辛いです!
大根によってそれぞれ違いがありますが、今回の食べ比べでは全体的に繊維に沿っておろしたものは甘味を強く感じ、繊維を断つようにおろしたものは大根の風味と辛みが強く出るように感じました。特に上の部分は、おろし方で辛みの強さが全く違ったのにはびっくりです。
それにしても、生の大根でもお刺身のツマやサラダだと辛くないのに、おろすとどうして辛くなるのでしょうか?
大根は部位によって甘さが違う、上手な大根の使い分け。大根おろしの辛さの不思議
大根には沢山の酵素が含まれていて、その中のひとつに、ミロシナーゼという酵素があります。ミロシナーゼは、マスタードやワサビなどにも含まれている成分です。すりおろしたり切ることで、細胞が壊れて科学反応を起こし、辛味成分のアリルイソチオシアネートが形成されることでピリッとした辛味になります。
ちなみにこの辛み成分は、大根の皮と果肉の間や根の下の方に多く含まれています。食べ比べでも、下の根の部分や繊維を断つようにおろしたものが辛みが強かったわけですね。私は真ん中の部分が好みかな?同じ一本の大根でも部位やおろし方で変わる味わい。自分好みの大根おろし、是非皆さんも色々試して見つけてみて下さいね。
文・野菜ソムリエ・ナチュラルフードコーディネーター 桜井さちえ
大根おろしの辛みは「おろし方」で変わるってホント?