お気に入りの「ちゃ豆」を求めて
ちゃ豆の産地は山形県の庄内地方です。ちゃ豆の収穫時期になると、産地直売所の売り場はちゃ豆で埋め尽くされます。「みんなこんなにちゃ豆が好きなんだな」と、地元のちゃ豆への愛情の深さに圧倒されます。この直売所、どこの売り場も、棚には生産者ごとに豆が並べられています。そしてその手前には試食用のタッパー。実際に試食して自分のお気に入りを選ぶのがご当地流です。
私もさっそく美味しそうな豆を選んで(といっても外見からは違いは全然わからないのですが)、いくつか試食。でも困ったことにどれもおいしい。あれ? さっきのと味が違う。こっちも美味しい!・・・でもあっちも美味しかったよな・・・うーん。
そんなふうにオタオタしていると、「○○さんとこのちゃ豆がおすすめだよ」とやさしいおじいさんが教えてくれます。さっそく教えてもらった豆と、隣の豆を食べ比べてみると、どちらも美味しいのですが、確かに教えてもらった豆の方が甘くて美味しい気がします。
試食の残りが少ないものが人気なんじゃないかと思いきや、本当の人気ちゃ豆は、「試食がたっぷり残っていて、商品が無いもの」なんです。ご近所さんだからこそ、どんな人がどうやって作っているのか、試食をしなくてもどんな豆なのかちゃんと解っているんですね。
ちゃ豆売り場で繰り広げられる、甘さ・香り・ジューシーさを巡る容赦なきバトル。あなたのお気に入りを探すには、やっぱり現地での産直体験をおすすめします。
ちゃ豆の品種と特徴
早いものだと6月下旬から収穫が始まります。代表的な品種と特徴をご紹介します。
・早生こまぎ:極早生品種で、甘みはやや弱いが風味があります。
・早生甘露:トウモロコシのような甘みがあり、ちゃ豆独自の香りが楽しめます。
・甘露:名前のとおり甘くて多汁なちゃ豆で、早生甘露よりもさらに甘みが強いのが特徴です。
・早生白山:鶴岡市の白山地区で作られていた品種が元となっています。一番人気の「白山」の早生品種です。
・白山:味、風味が格段に良く、ちゃ豆の代名詞にもなっています。
・尾浦:晩生の在来種で、大粒になり、山間部での栽培によって甘みが強くなります。
「ちゃ豆」の味の決め手
ちゃ豆の味を決めるのは、まずは生育環境である土地。あっちの畑、こっちの畑と、少しずつ離れた場所に畑があることは珍しくありません。畑毎に、土の成分、性質、気候が異なります。次に、どんな種を使うか。市販の種や自家採種の種といった数ある中から、種を選びます。品種ごとの特性と生育環境の相性が大切です。でも、実は味を大きく左右するのはその後。播種、土寄せ、肥料のタイミングなどの手入れの見極めこそが、味の決め手となります。
この「見極め」をするのがちゃ豆農家さん。「見極め力」こそが、ちゃ豆の味を決める一番のカギなのです。
親子で同じ種で作っても、「親父が作るともっと甘くなるんです」と農家さん。どんな見極めをするのかは、その農家さんの性格が出るんだとか。「メリハリのある味」「甘さ強め」「爽やかな甘さ」「食感重視」など、ちゃ豆農家さんはそれぞれ自分が理想とする「ちゃ豆像」を追い求めているのです。もしかしたら、自分の本当のお気に入りのちゃ豆に出会うためには、素敵な作り手を探さなければいけないのかも。