おひたしやゴマ和えサラダのほか、そうめんにトッピングしたりと、オクラはご家庭でもお馴染みの野菜ですね。暑くて食欲がないときでもさっぱり食べれるので、夏バテしたときでも食べやすい食材のひとつです。今回は、今が旬のネバネバ野菜 ”オクラ”をご紹介します。
オクラってどんな野菜?
オクラの原産はアフリカ東北部。エジプトでは2000年以上前から栽培され、東洋ではインドに広く普及しています。日本への伝来期は諸説ありますが、アメリカから伝来したことから「アメリカネリ」と呼ばれていました。一般家庭で普及し始めたのは1970年代に入ってからと日本ではまだ新しい野菜です。ハイビスカスの仲間であるオクラは、野菜の中でも群を抜いてキレイな花を咲かせます。クリーム色と黒のコントラストがとても美しい花であることから当時は食用ではなく、主に観賞用として楽しまれていました。
ちなみにオクラは、英語で「okra(オークラ)」、和名では「秋葵」と書いてオクラと読みます。そもそもオクラの旬は6〜8月と季節的には夏ですが、秋と書くのは不思議に思いますよね? 実はこの時期、旧暦では「秋」にあたるのだとか。そのため「秋葵」という漢字があてられたといわれています。他にも輪切にしたときの形が蓮根にも似ていることから「陸蓮根」とも書いたりもします。
あのネバネバの正体とは
独特の粘り気とクセになる食感が魅力のオクラですが、あのネバネバは何なのか気になったことはありませんか?
オクラの仲間にネバネバした粘液を持つ”トロロアオイ”という植物があります。特に根の部分に粘液を多く含んでいますが、この粘りの正体は、ムチン、ペクチン、ガラクタン、アラバンなどといった水溶性の食物繊維と粘質性のある多糖類による混合物。水に溶けるとゲル状になります。トロロアオイの根は叩いて煮溶かすことで粘りが出ますが、これに水を加えた粘液を「ネリ」と呼び、手漉き和紙のほか蒲鉾や蕎麦などのつなぎなどに使われます。オクラにもトロロアオイが持つ粘液と同じ成分がたくさん含まれており、オクラがネバネバするのはこのため。茹でた後、細かく刻んだり叩いたりして細胞を壊すことでヌメリが引き出されます。
ネバネバパワーで夏を乗り切ろう!
オクラには、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが多く含まれています。ここでは、オクラに含まれる栄養素について説明します。
▪️代謝に欠かせないビタミンB1
オクラにはビタミンB1が100gあたり0.09mgとピーマンの3倍含まれています。ビタミンB1はチアミンとも呼ばれる水溶性のビタミンで、糖質を燃やしてエネルギーに変えるときに必要な栄養素で、夏バテなどの疲労回復にも効果が期待できます。
▪️肌を健やかに保つビタミンC
野菜や果物に豊富に含まれているビタミンCは、たんぱく質の一種であるコラーゲンの生成に働くビタミンです。細胞を結合させ、血管や筋肉、皮膚などを丈夫にします。抗酸化作用も高く、鉄の吸収を促進させたり日焼けによるシミを防ぐ働きがあります。
▪️骨や歯の形成を助けるマグネシウム
マグネシウムは、人の体に必要なミネラルのひとつ。オクラには100gあたり51mgのマグネシウムが含まれています。カルシウムやリンと共に骨や歯を形成したり、体内で300種類以上もの酵素の働きを助ける働きがあるとともに、血液循環を正常に保つ作用があります。
▪️おなかの調子を整えてくれる食物繊維
腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整えてくれる食物繊維には水に溶ける水溶性食物繊維と溶けない不溶性食物繊維があります。オクラのネバネバの素にもなっている「ペクチン」と「ムチン」は水溶性の食物繊維の一種で、ペクチンは血中コレステロールを減らして血圧を下げたり、整腸作用があることで免疫機能がアップし、夏の弱った胃腸を整えたり改善する効果が期待できます。
また、糖たんぱく質のムチンもペクチンと同じくオクラのネバネバ、ヌルヌルの成分となっている水溶性食物繊維。ムチンには粘膜を保護する働きがあり、たんぱく質の消化と吸収を助ける作用があるので、お肉やお魚などと一緒に摂ると効果がアップしますよ。
オクラに含まれるペクチンやムチンは水溶性のため、茹ですぎるとせっかくのネバネバがなくなってしまいます。また、加熱時に酢を加えると粘りがなくなってしまうので調理する際は気を付けましょう。暑いと体がバテ気味になりがちです。そんなときはスタミナがつく旬のオクラを食べて元気になりませんか?
文・野菜ソムリエ・ナチュラルフードコーディネーター 桜井さちえ