新たなフィールドへの挑戦
「無から有を創り出す・・これがシセイ堂デザインの理念です。」こうおっしゃるのは鳥取市吉方温泉に本社を構える株式会社シセイ堂デザイン、取締役の植木美恵子さん。グッズ製作や商品パッケージなどのデザインを多く手がけるシセイ堂デザインが、自社ブランドを立ち上げて商品開発から販売まですべてを手がける「らっきょうピクルス」についてお話を伺いました。
発端となったのは10年前の「とっとりブランド戦略会議」の100品構想。5年間で100社100品の商品を開発し、新たな鳥取を発信するというねらいです。鳥取で活躍するクリエーターやメーカーなどとタッグを組んで挑む新事業で、シセイ堂デザインは特産品である「らっきょう」に目をつけたのです。健康志向が高まる今の時代に合い、鳥取らしい、でも今までにない商品を作りたい!そんな思いから、自社ブランド「スワンセ」は動き出しました。
食の分野へ踏み出すのは初めてながらも、ものづくりのプロたちは得意分野の「パッケージ」から商品イメージを膨らまし始めました。当時らっきょうといえば、ビニルパウチされた商品ばかり。店頭では寝かせて置くことになるので、どうしても華やかさにかけます。プロダクトデザイナーの宮田さんは「県外でも注目されるような商品作りを目指していたので、瓶詰めの高級感あるスタイルを選びました。」とおっしゃいます。
文字通り「試行錯誤」の日々
鳥取らしい、でも今までにない商品・・商品開発チームが出した答えは「ピクルス」でした。らっきょうをハーブの効いた洋風漬物にすることで、組み合わせるメニューも幅が広がります。プロトタイプを作る日々が続き、ようやくはじめての商品が完成。そして瓶入りのらっきょうにスタイリッシュなラベル、化粧箱も揃い、贈答用としての準備も順調に進んでいきました。
バリエーションを増やす際も、100品構想の原点を忘れず、鳥取ならではの食材の組み合わせを大切に丁寧な挑戦を続けます。
中でも「ごはんに合うらっきょう漬け」の商品開発は大きな挑戦でした。果たしてらっきょうが「ごはんの友」になれるのか・・試行錯誤の末、「味噌漬け」に至りました。
ゆず味噌の中にごろっとらっきょうの粒が入っているので食べ応えもしっかり。らっきょうの風味が移った味噌はなんともご飯が進みます。
「おかげさまで今では、ふるさと納税の返礼品としても喜んでいただいています。」とおっしゃるのは、ブランド戦略室・MD統括マネジャーの富盛さん。
卓球10分!らっきょう3粒!まずは社員の健康から
取材に伺う直前、本社前を通りがかるとガラスの向こうに卓球をされている人たちがいるのを見かけました。うかがってみると、植木さんは「毎日お昼休みに卓球するんですよ。卓球は誰でも気軽にできるでしょう。社員の健康維持のために会社に卓球台を置いているんですよ。コミュニケーションも取れますしね。」とおっしゃいました。
なるほど納得!自社ブランドでのらっきょうピクルスへの挑戦も、らっきょうの健康効果に目をつけて始まったのでした。合言葉は「1日に卓球10分!らっきょう3粒!」という社員みなさんの雰囲気が良いのもまた納得です。
スワンセの立ち上げから10年を迎えた今、これからの展望について尋ねると、これまでの丁寧な歩みを実感させるお言葉が戻ってきました。「やめることは簡単でも、続けていくことは難しい。だからこそ心をこめて続けていくことが大事だと思っています。」