大豆に豆麹を混ぜることで出来る「豆味噌」
日本全国には様々な種類の味噌があります。お菓子のように甘い京都の白味噌から塩分と旨みが凝縮した八丁味噌まで、地方により多種多様です。これらの味噌は、使っている麹の種類で3つに分類できます。
大豆に豆麹を混ぜた豆味噌は、他の米味噌などとは一味違う特徴的な味噌です。その歴史は古く、西暦730年の文献に尾張の国から朝廷に献上されていた文献が残っています。これから50年後くらいから都では米味噌の普及が始まったことから、豆味噌は味噌の源流とも呼べるでしょう。
豆味噌の味は、普通の味噌とどう違う!?
味噌は砂糖が普及していない時代の貴重な甘味でした。材料に、甘味が豊富な米麹や麦麹を原材料として加えるため、米や麦の甘みが重宝されたのです。一方で豆味噌は豆麹と塩に水を加えて作ります。米や麦に比べると糖質が少ないため、味は甘みが弱く渋みが強い味になります。見た目も特徴的で、黒に近い茶色と粘土のような硬さです。豆味噌は他の味噌と比べて外見が異なるのは、醸造する長さの違いです。他の味噌は醸造期間が1年以下ですが、八丁味噌は1~3年も熟成させます。長期間熟成させるために、水分が抜けて固くなり、塩分濃度も高くなるため濃い色になります。
豆味噌が東海地方で多く作られる理由
豆味噌は、愛知県を中心に東海地方で多く作られています。代表的な豆味噌といえば、愛知県の八丁味噌があまりにも有名。他にも赤味噌や名古屋味噌など様々な名称で呼ばれます。
では、なぜ東海地方では、豆味噌のような特殊な味噌が作られるようになったのでしょうか。
東海地方は夏がとても暑く、湿度も高い地域。米味噌や麦味噌を作れば、大豆に含まれる脂肪酸が酸化して劣化が進んでしまいます。専門用語では「酸敗」と呼ばれる現象です。大豆に直接麹菌をまぶして、塩をたっぷり使った豆麹を作ることで酸敗を防ぐ熟成方法が生まれ、豆味噌が出来るようになりました。
他の地域ではより食べやすい米味噌や麦味噌が普及した一方で、気象条件の影響で古来の製法を守ることになった東海の豆味噌は、生きた歴史遺産と言えます。