畑は生産者さんの人生の縮図/スイート光黄生産者・佐藤春芳さん

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山形県天童市でスイート光黄を作る、ナチュラルファームさとうの佐藤春芳さん

黄金桃

佐藤さんに電話をすると「はいは〜い」という、穏やで少し伸ばした声が聞こえてきます。その一声で、佐藤さんの和やかで豊かな時間に魅き込まれ、ほっとした気持ちになり、日に焼けた褐色の肌、小柄な身体、極上の笑顔が浮かびます。そんな穏やかな雰囲気の佐藤さんですが、農業経営ではかなり前衛的で「変り者」だったそうです。

米農家の長男として生まれた佐藤さんは、学校を卒業後に就農し、40年以上農業一筋です。当時、ごく少数だった有機農法を先駆的に取り入れ始めました。減田政策が始まった時期でもあり、米専業から、野菜やいちごの栽培を経て、現在はさくらんぼ、桃、米、小麦を有機栽培で作っており、エコファーマー認定を受けています。*「エコファーマー」とは、平成11年に「持続性の高い農業生産方式の導入に関する法律」において、制定され、安全・安心の代名詞となっています。堆肥等の土づくりを基本として化学肥料、化学農薬の使用量を低減するための生産方式(持続性の高い農業生産方式)を自分の農業経営に導入している生産者が認定されます。

今でこそ「有機栽培」は認知され生産者も増えていますが、毎日毎日鶏糞を畑に蒔き、堆肥作りをする姿は、始めたばかりのころは奥様からも「何やってるの…」と理解されなかったと笑って言います。「だって、みんな美味しいモノを食べたいでしょう!」それが佐藤さんの原動力です。山形ではまだ桃の栽培が盛んではなかった約30年前、佐藤さんは桃の栽培をはじめ、「娘に美味しい桃を食べさせたい」という一心で、より一層、熱心に桃作りに励むことになりました。桃の木の寿命は通常15年程と言われていますが、佐藤さんの畑では、30年前に植えた当時の桃の木が今もまだ健在で、毎年豊かに果実を実らせています。

佐藤さんの「スイート光黄」栽培方法

山形の桃畑

佐藤さんの畑に行くと、木の高さと葉の多さに驚きます。隣の畑は果実が見えるのに、遠くからは桜が散った後の葉だけ残った木のようで果実が見えません。一般的な栽培では、枝を横に横にと伸ばします。ですから木の高さもせいぜい2mくらい。でも佐藤さんは木の「芯」を残し、その柱を中心に、枝をバランスよく伸ばすため、すらっと背の高い木になるのです。桃はどこに?と、畑に入り木の下へ入ると、枝が傘のホネのような形になっています。外側は葉だけでシンプル、内側に鮮やかな桃がなっているのです。大きな木陰で見上げると愛らしい桃が鈴なりで、まるでおとぎの世界です。

余分な枝を切る剪定作業をする際にも、佐藤さんは「葉をできるだけ残す」という一見真逆のような方法で剪定をします。おとぎの世界の木は、このような少し変わった栽培方法で誕生しています。佐藤さんは自然に近い状態で育てることを基本と考えます。葉っぱがたくさんあると、その分光合成をするため、果実に栄養がたっぷり行き渡り、美味しい桃ができあがるのです。木が元気に長生きするのも、これが理由なのかもしれません。
「木も人も、何でも『芯』がないとダメ」
そんな佐藤さんの言葉にドキリとします。畑は生産者さんの人生の縮図なのかもしれません。佐藤さんの経験と人柄が凝縮されています。

黄色くない桃、スイート光黄

スイート光黄山形県の桃

皮が黄色いことが「スイート光黄」の特徴のひとつです。市場では赤と黄色の2種類があった方が人気が出るという理由で、専用の袋を被せて黄色い桃が作られています。でも佐藤さんの「スイート光黄」は、皮にうっすらと赤みが入っています。「本当に美味しい桃を届けたい」と、たっぷり太陽を浴びさせ、木で完熟させてひとつひとつの果実の表情を確認して収穫しているからです。「なんで黄色じゃないといけないの?」と、佐藤さんはいたずらっ子のように楽しげです。
初めていただいたときには、だいだい色の果実とサクサクした食感に、柿かと思いました。それ以来この桃の大ファンです。初めて食べる方は誰もが驚き、美味しさについつい手が伸びるスイート光黃。皮をむかずに食べるのが一番美味しいと思います。夏の終わりに実る佐藤さんのスイート光黄。秋はもうすぐそこです。

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