美味しいぬか床は適度な「放ったらかし」が大切
さてぬか床ができあがりました。初っ端に漬けた「捨て野菜」を食べてみるとあまりの塩っぱさにびっくりしてしまいます。それもそのはず。出来立てのぬか床は植物性乳酸菌がほとんどないため、甘みがなく、塩気が勝っているからです。5回以上捨て野菜を取り替えると、10日~2週間でぬか床か馴染み、美味しく漬かるのは1〜2ヶ月後からです。初心者には気の遠くなる話ですが、200年以上も受け継がれているぬか床が存在しているわけですから、美味しいものは1日してならずです。
では「手をかけた分だけ美味しくなる」のでしょうか。実は初心者の失敗の一番の原因は「ぬか床の混ぜすぎ」です。朝に晩に、せっせとぬか床をかき回すと空気が入りすぎて乳酸菌が増えづらくなります。植物性乳酸菌は空気があってもなくても生きられる菌ではありますが、家庭用の少量のぬか床では朝晩細かくかき回すのはやりすぎなのです。
毎日の手入れはぬか床の様子を見守り、「会話する」ことが大切です。1日1回、前日に入れた野菜を取り出す際にまず表面をよく見てください。ぬか床の表面の空気に触れた部分は、酸化して少し変色しています。腕を容器の中に差し入れると中から黄金色の熟成されたぬか床が出てきます。それをざっくり大きく、天と地をひっくり返すように、内部の黄金色のぬか床と、酸化して変色した表面を入れ替える程度で十分なのです。混ぜた後や野菜を漬けた後は、ぬか床の中の空気を抜くように表面を平らにならし、よくたたきつけて、容器の周囲についたぬかをふき取ってからフタをしてください。
ぬか床が減ってきたら「足しぬか」をする
野菜を漬け続けていくと、ぬかが減ったり、ぬか床がゆるくなってきます。その場合は「足しぬか」をします。足しぬかの量は「ぬか1カップに塩小さじ1」の割合が目安です。また、1度に大量のぬかを足すのは避けてください。ぬか床の乳酸菌が減少します。 多くても足しぬかは「ぬか1カップ分」です。「足しぬか」をしてもまだぬか床が水っぽくてゆるい場合は、ぬkらして固く絞った清潔な布巾で表面を覆い、手で押さえて水分を吸わせます。まだ水っぽさが残っている場合は、布巾を洗って水気を絞り、再度吸わせます。そのまま1日置いて様子をみましょう。作業が終えたら、布巾をはずしてください。
逆に足しぬかの量が多く、固くなってしまった場合は日本酒を加えます。日本酒を加えると、甘みと風味で酸味もまろやかになり、夏の暑い時期に酸っぱくなってしまった際の対処にもなります。
ぬか床を休ませたい場合
長期で旅行などに出かけたり、たまにはぬか漬け生活を休みたい場合、ぬか床から全ての野菜を取り出し、表面を平らにして粗塩を多めにふります。上から厚手のペーパータオル(または半紙)をのせ、赤唐辛子を3ほんのせてフタをし、冷蔵庫へ保管してください。再開する時は、粗塩がついたぬかをある程度取り除いてから漬け始めます。夏に2〜3日間家を開ける程度なら、フタをして冷蔵庫に入れるだけで十分です。1週間以上も家を空ける場合は、ジッパー付きの保存袋に移し、冷凍庫で保管します。冷凍しても乳酸菌や酵母菌は死なずに生きています。再び使う際は、常温で解凍し、余分な水気が出ていたら紙タオルで吸い取り、容器に移して漬け始めましょう。
万が一、ぬか床にカビが生えてしまっても慌てないでください。問題なく使うことができます。まず、カビが生えたぬかの部分を、ヘラなどで削り取ってください。そしてカビの繁殖を防ぐために赤唐辛子、皮をむいた生姜を適量加えて、よくかき混ぜ、焼酎など35度以上のアルコールで濡らした紙タオルで容器の内側についたぬかや汚れを丁寧に拭き取り、殺菌します。
いかがでしたか?ぬか床は毎日かき混ぜないといけない、と身構えてしまっていませんか。カビが生えても、水分が多くなっても、酸っぱくなっても、対処法はあります。長期不在の場合でも冷凍庫、冷蔵庫を活用すれば問題ありません。ご自身のライフスタイルに合わせて、ぜひ昔から伝わる日本の伝統食「ぬか漬け」で美味しくて健康的な食生活を送っていただけたらと思います。
ぬか漬けってそもそも何?ぬか漬けの歴史と伝統