昼夜の寒暖差と肥沃な赤土が美味しいかぼちゃを育てる
今回お話を伺ったのは、岐阜県瑞浪市で半原かぼちゃを作っている生産者の土屋勉さんと勝股英昭さん。半原かぼちゃを作り始めて60年の土屋さんの畑へおじゃまして来ました。畑がある場所は、自然に囲まれたのどかな地域。ご自宅前にある畑には沢山かぼちゃが実っています。
半原かぼちゃは、ゴツゴツとした形と皮に白い模様が入っているのが特徴で、果肉はオレンジ色。切るとスイカのような爽やかな香りが漂います。小菊のような花の形が可愛らしい小型のかぼちゃです。地元では、プリンやジェラートなどのお菓子に加工され、瑞浪市の特産品にもなっています。
おいしいと評判に・知る人ぞ知る半原のかぼちゃ
半原かぼちゃは、瑞浪市日吉町半原地区で昭和10年頃から栽培が始まりました。元々、地元の農家さんが畑の片隅で家庭用として作っていたそうです。当時から、ほぼ地元の中だけで消費されている為、市場に出回る事がありません。
昔、地元の八百屋で売ったところ「この美味しいかぼちゃはどこのかぼちゃや?」これは「半原のかぼちゃ」や、と評判になったとか。半原の地域で作られていた事から「半原かぼちゃ」と呼ばれるようになったそうです。
収穫は7月中旬から8月お盆過ぎ頃まで行われます。ちなみに瑞浪市は7月盆と8月盆のふたつの地域があるとのこと、7月盆は13日。小ぶりの半原かぼちゃはお供えにぴったりで、昔からナスやキュウリなどと一緒にお供えするそうです。
「昔は7月のお盆に間に合うように作っとった」と土屋さん。以前はお盆の時期になると沢山注文が入ったそうです。「今はプリンになる為に作っていますね!」と勝股さんが言うと、土屋さんは「そうやなぁ」と笑っていました。
勝股さんは、普段は会社員として働くサラリーマン。休日を利用して農業を営んでいます。また、野菜ソムリエの資格を活かし、野菜の魅力を伝える活動や、地元の仲間と一緒に里山を楽しむコミュニティー活動などもしています。半原かぼちゃの栽培を始めたのは3年前。
きっかけを伺うと「何か自分も野菜を作ってみたいと思ったことと、地元に伝統野菜があったこと」でした。とはいうもの、それまで家庭菜園しか経験がなかった勝股さん。栽培方法を学ぶ為、インターネットを使って農家さんを調べて訪ねた先が土屋さんのお宅。それが、土屋さんと勝股さんの出会いとなりました。
最初の1年間、勝股さんは土屋さんの畑へ通い作業を手伝いながら見て学んだそうです。しかし、会社員なので、時には長期で出張が入る事も。その時ばかりは友人達に声をかけ、ボランティアスタッフを募集して作業をお願いています。困った時には仲間に助けてもらいながら乗りきっています!そんな、忙しい勝股さんですが、ゆっくり休めなくて大変じゃないですか?と聞くと、畑へいくこと「これが僕の休日の過ごし方なんです」と勝股さん。かぼちゃ作りを楽しんでいるのが伝わってきますね。
かぼちゃが繋いだ、人と里山の伝統野菜
現在、半原かぼちゃを作っている農家さんは土屋さんと勝股さんを合わせて3人。数年前までは十数人いたそうですが、高齢化でどんどん減ってしまったそうです。土屋さんも今年90歳、もう一人の方も80歳以上と高齢の方。後継者不足なのも悩みです。
そんな中「勝股くんが来て、かぼちゃを作ってくれてうれしいよ」と土屋さんは嬉しそう。勝俣さんも土屋さんの事を「師匠」と呼んで慕っていて 「僕がいる間は、種だけでも残していきたい」と半原かぼちゃへの想いも伝わってきました。
見ていると、とっても和やかな雰囲気の二人。そんな土屋さんと勝股さんを見ていて、かぼちゃを通じて人と人が繋がって、このままでは途絶えてしまいそうだった種がこれからも未来へ繋がったことって、とってもすごい事で素敵なことだなと思いました。
文:野菜ソムリエ・ナチュラルフードコーディネーター/桜井さちえ
料理別・かぼちゃの切り方と下ごしらえ