「もやし屋」と呼ばれる種麹屋
腸内環境 (腸内フローラ)がよくなると、お肌の調子もよくなり、免疫力がアップします。この腸内環境を整えてくれるのが発酵食品。そして、発酵食品は必ず発酵を促す菌によってつくられます。代表的なものには、麹菌や納豆菌、乳酸菌など、どこかで聞いたことがある菌が並びます。その中でも、私たちに身近な味噌や醤油、お酒をつくるのが麹菌。この麹菌、日本の風土や気候に合ったもので、室町時代にはすでに発見されていました。スーパーなどで売られている多くの味噌や醤油、お酒などは、大量生産に向いている麹菌を研究し、商品にしています。一方で戦前までは、種麹屋(タネコウジヤ)さんから、麹菌を買って、味噌や醤油、日本酒などを製造していたところが多数でした。
そこで今回は、その麹の元をつくって味噌や醤油、お酒メーカーへ販売する、業界では「もやし屋」と呼ばれる種麹屋 (タネコウジヤ)さんをたずねてみました。お伺いしたのは、日本の麹文化の発祥の地の一つ、京都の老舗種麹屋「菱六」さん。
前回取材をさせていただいた静岡県浜松市の「加藤醤油」さんにも種麹を卸していらっしゃいます。お話を伺ったのは若き社長の助野彰彦(すけのあきひこ)さん。早稲田大学を卒業後、醸造の知識を追求するために東京農業大学に入学されたという経歴の持ち主です。
京都の老舗種麹屋菱六の助野さんに聞く麹のこと
――種麹とは、どのようなものですか?
麹がないと発酵食品が作れない。つまり、発酵食品の元のようなものが麹です。そして、種麹がないと、まず麹が作れません。麹を作って行くときに、米麹だったら、お米と種麹。麦麹だったら麦と種麹が必要になります。私たちは (培養対象となる)培地に種麹をつけ、麹菌の胞子を根付かせるのが仕事です。
――種麹を売る「もやし屋」は全国でもあまりないと聞いたのですが?
今現在日本全国に存在する種麹屋は10数社。その中でもちゃんとやっているのは5社か6社。この種麹屋が日本全国の酒蔵や醤油蔵に麹を卸しています。
――日本全国に卸すほど、そんなに大量に培養できるものですか?
(醤油などの基になる麹は)お米200キロに対して種麹が200グラムあれば培養できるくらい繁殖力が高いですね。
――先ほど「もやし屋」・種麹屋が全国で6件あまりということでしたが、少ないですね。
「もやし屋」は麹を特権的に売っていたのですが、各酒屋さんや味噌、醤油メーカーで造った方がいいのではないかという事になり、その商売が立ち行かなくなり店をたたんだところも多いんです。
――麹を使った製品は、健康にいいのですか?
味噌なんかだったら、アミノ酸の量は、普通のスポーツ飲料に対して比べものにならないぐらい入っています。夏には、塩分を取れっていうけど、お味噌汁の塩分濃度は1%ぐらいだし最適だと思いますね。
――「もやし屋」ならではの使い方はありますか?
僕の場合は日常に食事で、3食みんなお味噌汁を飲んでます。後、米麹を粉にして、ご飯にかけたりしていますね。ちょっとあまいかな。消化をよくするための天然の胃腸薬みたいなものですね。米麹は消化酵素を出すので、そこの動きは胃腸薬なんかと似てるんですよ。元々、有名な整腸薬に入っているタカヂアスターゼも麹菌でつくられてますね。その整腸薬も食後に飲むように書いてあるんですが、胃は元々酸性で、ご飯を食べた時に中性になるから、それを元に戻してくれる。食事をしながら、麹でつくられたものを取るのはいいですね。
美食同源!発酵食品で美容や健康に。
アンチエイジング、美容や健康の面で、発酵食文化が見直されています。美食同源!私たちももう一度、身近なところから美容を見つめ直していいかもしれませんね。
もやし屋「菱六」さんの麹の種類はこの4種類。作り方は、繁殖しやすいように玄米を3%だけ削り、菌を植え付けて30~35度で湿度100%で一週間培養。最後に日持ちするように二日間乾燥させます。(左から)緑色はお酒とお味噌と醤油、みりんとお酢用。白色は味噌と食品売り場で売っている麹。茶色は泡盛と黒焼酎用。黒いものは一般的な焼酎用です。
写真・文:岡本淳子(Aisha Beaute)