心も苺も真っ赤にするいちご農家さんの想い ~愛知県岡崎市のいちご農家「伊藤園」伊藤吉孝さん

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苺を作るのに必要な1年間

今の季節、スーパーの顔ともいえる苺――そんな旬な苺を思う存分味わえる、いちご狩りの楽しみ方を前回「伊藤園」伊藤吉孝さんに教えていただきました。今回はいちご農家さんの想いを中心に伺ってみました。

苺って、つくるのに約1年間かかるって知っていましたか?
苺は3月に親苗を植えて、その後子どもの苗ができます。そして夏頃に、その子ども苗を増やします。そして秋に苗を植えて、冬に育て、収穫・出荷します。当たり前ですがどんな野菜・果物もできるまでに苗づくりがあるのです。野菜・果物をスーパーで買うときにそんなふうに感じて購入していますか?苺には1年間の愛情がこめられています。

美味しいいちごは午前中がおすすめ

いちご栽培は苗づくりが大切!

いちごはクリスマスケーキに使われるため、12月に出荷する必要があります。いちごの旬は1月から2月なので、早く皆さんにお届けするためには育てる際の工夫をするそうです。その工夫は夏の時期の苗に、“季節の勘違い”をおこすことです。どうするかと言うと、夏の夜間は冷庫に苗を入れて温度を調整します。そうすると、夏だけど冬が近づいていると思い、苗を植える秋には春が来たと感じて、早く実がつき出荷できるという流れです。

また、苗づくりでは病気にかからない強い苗をつくることが大切で、このことがその後の出荷量を大きくかえるそうです。このように実は、苺をつくる重要な作業としては苗づくりが7割、その後の栽培管理は3割程度だといいます。そのため、夏の時期の苗づくりがとても大切で、いちご農家さんは冬が忙しいと思われがちですが、実は夏に大きな仕事があるということを知ってもらいたいとのこと。

品種・栽培仕方で大きく違う

伊藤園さんへのインタビューで、苺の栽培には、高設栽培(地面より高い位置に棚を組み、苺を栽培する方法。収穫しやすくいちご狩りがしやすい)、土耕栽培(昔ながらの栽培で畑のように土に根をはり栽培する方法。いちご狩りはしにくい)があるとお伝えしましたが、この栽培方法の仕方でも育て方が大きく異なります。

いちご

高設栽培は高い位置でプランター等に培土を入れて人為的に栽培管理をすることが可能で、作業効率がとても良い栽培方法です。土耕栽培はおいしい苺ができやすいとされていますが、収穫時には腰をかがめて作業をするため、作業効率は良くないのです。

普段食べている苺はなんて名前?品種も様々あります

伊藤園さんでは静岡生まれの品種“紅ほっぺ”を主に栽培。木が強く、粒が多くて大きいので人気で、おいしく、味のバランスが良いといいます。いちご農家さんは栽培や品種を決め、いろいろな苦労をしながら、皆さんにおいしい苺を届けるべく丹精込めて育てられています。心も苺も真っ赤にしてくれる苺ができるにはたくさんの想いが込められています。

特に伊藤さんは、農業の受け皿の大きさに魅力を感じて農業をされています。それは、ただ自分で作ったものを加工して販売する以外に、レストランを開いたり、障害を持っている方と働ける環境をつくったりすることが出来ること。自分の頑張り次第で、衣食住のほとんどと農業は関わりを広げていけることに可能性を感じています。伊藤さんは地域活性も見つめ、農業の可能性も信じて、日々努力しています。応援していきたいですね。

愛知伊藤園さん

文: 松田悠/地域環境学習コーディネーター