野菜生産と和牛の繁殖、相乗効果で好循環
大西さん夫妻は結婚した当時は働きに出ていて、ご両親が酪農と金時にんじん、金時いも、米の栽培をしていました。大西さん自身は子供が生まれてから仕事を辞め、育児に専念しました。その後ご主人から会社を辞めて農業をしたいと相談され、一緒に就農することを決めました。
専業にするなら毎月出荷できるようにと品目を増やし、収入の安定を図ることに。すでに栽培していた金時にんじん、金時いもと収穫時期が重ならないブロッコリーやアスパラガスの栽培を開始しました。また酪農をしていたご両親が、和牛の子牛生産に切替えました。和牛の生産は毎日朝夕の搾乳作業がなく、餌やりと体調管理が中心となるためご両親の負担が軽減され、さらに野菜と組み合わせることで別のメリットも生まれました。
「畑ではどうしても売り物にならない野菜が出てしまいます。うちの牛はその野菜を食べているんです。無駄なく良い循環だと思います」。大西家の和牛は小豆島に運ばれ、オリーブ牛などのブランド牛になることもあります。
地域との関わりを通して人とつながる
人を雇わず家族のみで経営している大西家ですが、大西さん自身は地域の方々とどう関わっているのか伺いました。「私、何年か前に入った女性部では一番年下なんですよ」。
大西さんが所属する農協の女性部は、年に2回ある地域の祭りに参加することが恒例で、夏はおはぎ、冬はうどんを作って販売しています。特に坂出市名物の「天狗うどん」は、地元の野菜がふんだんに使われておりお客様からの評判も上々。
他にもワークショップをしたり旅行に行ったりすることもあるそうです。「集まるのは農家ばかりなので、それぞれが栽培している物の生育状況などの話で盛り上がり情報交換もできます。何より仲間と交流できることは楽しいです」と話してくれました。
野菜生産と和牛の繁殖、相乗効果で好循環
金時にんじんは甘味ときれいな紅色が特徴で、料理の彩りにも好んで使われています。「シチューに入れても甘くて色がきれいなんですよ」と大西さんは嬉しそうに話します。
金時にんじんはお盆の時期から砂地の田んぼで作ります。坂出の特徴である砂地が金時にんじんの生育には必要です。水やりは夏の暑い時期には1日4回。葉には虫がつきやすいので細かく状況を把握しながら、野菜に合わせて丁寧に育てています。人手が必要な時期は息子さんと娘さんが手伝ってくれます。特に害虫を防除するときには、100mもあるホースを息子さんが引っ張ってくれるのでとても助かっています。収穫してからは1本ずつ刃物で葉と根を切り、規格ごとに選別し、洗浄、出荷という工程が続きます。「みんなで葉を切り、母が選別して、夫が洗って、翌朝出荷するというペースです。出荷までは全て手作業なので、収穫期は家族総出になります」とのこと。収穫が一段落したら、家族で外食に行くことを楽しみにしています。
「大変なこともありますが、いいものが出来たら嬉しいです。おすそ分けした人から美味しかったよって言われるとまた頑張ろうと思います。それに地場産のものがなくなったら寂しいので、これからも守っていきたいです」。大西さんは穏やかに微笑みながら、今後も地場の誇りを守り続けていきたいと話してくれました。