「いりこ」と「煮干し」ってどう違う?
西日本では「煮干し」のことを「いりこ」と呼びます。つまり、いりこと煮干しは同じものなのです。いりこは、漁獲後に茹で、乾燥させて出来上がります。原料となるカタクチイワシは鮮度が落ちるのが早いため、漁獲から加工までをどれだけ素早くできるかがいりこの美味しさ・品質につながります。香川県では讃岐うどんの濃厚な出汁に「いりこ」が欠かせません。香川県西部の観音寺市から約10kmの位置にある「伊吹島」で獲れる「伊吹いりこ」は、日本一のいりこといわれています。魚場と加工場が非常に近く、漁獲から加工まで全てを漁師さんが行うため、網を引き上げてから10〜30分以内に加工場へ運搬できるため、鮮度が高く上質ないりことなるのです。
いりこの種類、なぜいろいろな大きさがあるの?
いりこ(煮干し)の売り場にはいろんな大きさのいりこが売られています。なぜいろんな大きさのいりこがあるのでしょうか?−−−−カタクチイワシは大きい順に「大羽(オオバ)」、「中羽(チュウバ)」、「小羽(コバ)」、「カエリ」、「チリメン(シラス)」の5種類に分かれ、大羽〜カエリまでが「いりこ」と呼ばれています。
大きさの違いは、漁獲時のカタクチイワシの成長過程の違いなのです。 6月中旬ごろ獲れる、産卵後の親魚が一番大きいいりこ「大羽」になるのです。その後半月ほどで卵がかえり、7月上旬ごろに「シラス漁」が始まります。シラスが成長し、7月上旬・中旬ごろに獲れるカタクチイワシが「カエリ」です。その後7月中旬には「小羽漁」、7月下旬には「中羽漁」が始まり、9月中旬ごろまで続きます。いりこ漁の時期には制限があり、許可期間は5月15日〜1月15日までと決まっています。けれど、近年カタクチイワシが不漁となっていることから、資源状況を見ながら秋には漁を終えることが多くなっています。
「いりこ」の大きさによってなにが違うの?
では、それぞれの大きさのいりこには、どんな違いがあるのでしょうか?−−−−いりこの中でもっとも小さい「かえり」は、そのまま食べるほか、佃煮などに加工されることもあります。「小羽」はそのまま食べるほか、あっさりとした出汁がとれます。「中羽」になると出汁のコクが深くなります。「大羽」になるとイワシに近づくため旨味がぐんと濃くなり、うどんの出汁などに使われます。−−−−カタクチイワシのサイズが小さいものはそのまま食べるのに向いていて、大きくなるにつれて出汁の旨味は濃くなるということです。
漁師さんたちが鮮度にこだわって作り上げる「伊吹いりこ」だからこそ、購入後の保存にも気を使いたいものです。いりこは脂肪が酸化すると嫌な臭いが出てしまうため、長期保存はもちろん、毎日使う場合でも、通気性のない袋に入れて冷凍庫で保存します。出汁をとるのが面倒で…、いりこ出汁は臭みが気になる…という声を聞きますが、美味しいいりこが手に入れば、何の心配もいりません。
「伊吹島方式」の出汁の取り方はとても簡単!
鍋に水といりこを丸のまま入れて火にかけ、沸騰直前で火を止め、そのまましばらくつけておくだけ!(水1リットルにいりこ30gが目安)
余裕のあるときは…
頭と内臓を取り、水に30分浸し、火にかけて1分間沸騰させる。(前日から水に浸しておくとさらに味わい深い出汁になる)
また、魚嫌いの子どもに困っているお母さんも多いはず。焼き魚と格闘する前に、カエリや小羽をおやつにすることから始めてみませんか?美味しいいりこを手に入れて、空き瓶などに入れて食卓に出しておくだけで、自然と家族の手が伸びるはずです。