手間ひまを惜しみなくかけて育てる干し椎茸
干し椎茸はその形状、色、味、香り、食感の良さが種類により違い、価格も違います。「冬菇椎茸」は晩秋から初春にかけて徐々に育った椎茸の傘が開く前に(大きさは4.5cm~6cm位)収穫して乾燥させた物です。肉厚な「冬菇」は肉薄の「香信」にくらべ歯ごたえや形がよく、旨味もあります。干し椎茸の仕上がりの状態はやはり生の椎茸つくりの善し悪しに左右されます。
八王子で原木椎茸を栽培する田倉さんに椎茸の栽培についてお話を伺いました。
「ころっとしているものが「冬菇」開いているのが「香信」。干し椎茸を専門に作る農家さんは一つ一つに和紙を包んで「冬菇」の形を作るんですよ。とても手間と時間がかかるものです。うちは生椎茸がメインですが「冬菇」の形にするのにとても気をつかいます。傘がぱっと開いてはだめ。じっくり原木とそこにまわっている椎茸菌と対話しながら育てます。
水につけたり、ハウスに入れたり、冷たい暖かいの繰り返し…この作業は季節を作るように温度管理をして、椎茸菌がじっくりと伸びていくように育てます。そして大きさ、形の適期を見計らって収穫します」
自然の力と農家さんの腕で手間ひまかけて育てられた椎茸。極上品は笠がきゅっと締まり、軸が太くて曲がりが少ないものです。
干し椎茸の最高級品「天白冬菇」
干し椎茸「冬菇」には、より高級で美食家に愛されている「天白冬菇」「茶花冬菇」があります。
「天白冬菇」は傘の表面の花模様が白く、割れ目がはっきりしています。「冬菇」の中で最高級品として賞賛されています。気温が摂氏5度〜8度の間、湿度35度以下で、天候などの条件が揃わないとできないため(ある農家さんでは全体のわずか1%しかできないほど)希少価値が高く贈答品としても人気があります。
「茶花冬菇」は傘の表面の花模様が薄茶色に割れています。寒さの厳しい時期に、ゆっくり育った椎茸がこのような亀裂が入ります。乾燥した空気により、薄茶色にひび割れてできるのです。
冬菇を美味しく料理に活かす
存在感ある「冬菇」はじっくり煮込んだり、焼いたり、メインに近い存在にする料理に向いています。たとえば、含め煮・おでん・きのこシチュー・きのこカレー・炭火焼などです。とくに含め煮は驚くほどジューシーに椎茸の旨味が堪能出来ます。
また「天白冬菇」は30時間かけて戻すといわれます。美味しい食材をより美味しく食べるためのコツを知っておくと良いでしょう。この「冬菇」全てが天日干しとは限りません。スーパーで出回っている物のほとんどは機械乾燥です。
「やっぱり手間ひまかけた天日干しは味が違う」
と椎茸農家の田倉さん。
田倉さんが販売するスライスした干し椎茸は天日干しをしています。機械乾燥だけでは出ない美味しさがあるそうです。
もし機械乾燥のものを購入したら(袋に明記してあります)1日、天日に干してみてください。味だけでなくビタミンDの栄養価もあがります。ぜひお試しください!
文・イラスト・写真 / ほし まさみ(イラストライター、野菜コーディネーター)