見た目で選ぶことなかれ 、たっぷり甘い青梨系の新顔「秋麗」

総合評価: 4.035 件のレビュー)

美味しさの印は〝サビ〟にあり

夏から秋にかけて旬を迎える梨。ジュワッと甘い果汁がのどを潤す瞬間に幸福を感じます。梨といえば8月にピークを迎える「幸水」に続き、8月下旬から「豊水」とメジャーな品種が出回る間に、瞬間的に数少なく出回る品種「秋麗(しゅうれい)」があります。

秋麗

ご存知でしょうか?この「秋麗」を見つけたら即、買いです!2008年頃から流通が始まり、まだまだ生産量の少ない希少品種です。素朴な見た目とのギャップに誰もが驚く美味しい梨なのです。

鮮度の良い、美味しい梨の見分け方といえば、左右の形が対象に整っていて、皮に色むらや傷がなく、ずしりと重いものがおススメですが、「秋麗」はやや平たい形。皮には〝サビ〟という傷のような褐色の斑があり、綺麗とはいえない外見。しかし食べてみると、美味しいことといったら!!

『梨はサビがある程、食味がよい』という特性があります。サビは無袋栽培により果皮が太陽に直接あたった証。その分、糖度が高くなります。梨は糖度が11度でも甘いのですが「秋麗」は12度以上。サクッとした食感、幸水以上に濃い甘み。芳醇な香りがすうーと鼻に抜けていきます。

青梨系のホープ

秋麗

青梨系の「秋麗」は2003年に国の研究所により「幸水」と「筑水」を交雑させ誕生しました。親にあたる「幸水」からは緻密な果肉から溢れだす果汁の多さとシャキシャキ感を「筑水」からは濃厚な甘さを受け継ぎました。「幸水」「筑水」ともに赤梨系ですが共に親は青梨系なので「秋麗」は青梨系になりました。

かつて一世を風靡した「20世紀梨」をはじめ青梨系が赤梨系におされ減少する中、新しい青梨系の開発が進められ「秋麗」が誕生しました。青梨系の期待の星「秋麗」の苗は全国に配られましたが…生産をする農家はほとんどいませんでした。それは「秋麗」は大変美味しいのですが見た目が悪く、生産者の手間と時間がかかる栽培の難しい梨だったからです。

青梨

剪定と誘引作業の難しさ

「秋麗」は花が多く咲くため実も多く付けるのですが、その分、摘花(すぐれた果実や花を得るために植物体の開花に対して間引きを行う剪定 (せんてい) 作業の一種)も大変になります。また6月から7月にかけて雨が続き、水分を多く含みすぎるとすぐ割れてしまい、たくさん実を付けても商品にならないものは摘果をせざるおえないため、収穫の予測がつかない難点もあります。

水分が果樹にいかないよう工夫し、摘果をくりかえし、満遍なく日を当てて美味しい果実に育てるための作業が必要です。収穫のタイミングにおいても経験を積んだ者にしかわからない難しさがあります。極めて高度な匠の技が必要とされるのです。

そんな「秋麗」の大半を出荷する県は熊本県だけです。県をあげてブランド梨としておしすすめ、年々生産量をあげています。県基準の糖度12度以上をクリアしたものだけを出荷します。中でも、高糖度の13.5度以上のものは特選品として関東の果物専門店で販売されます。

「秋麗」のピーク時期は8月下旬からの数週間。馴染みは薄いですが味は濃厚。他県でも生産はあるため、今後、出荷が増えることを期待したい青梨系の期待の星「秋麗」。見かけたらぜひ味わってください。

8月におすすめの梨

(文・写真/ほしまさみ)