梨農家の1年は、とても熱く充実している/ありのみ倶楽部 前田大生さん

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大切に育てた梨をたくさんの人に届けたい

梨の産地として知られる鳥取県。「ありのみ倶楽部」は、鳥取市の河原町水根にあります。代表である前田大生さんは、両親と兄弟と共に、梨を育てている農家さんです。前田さんのところでは、二十世紀梨はもちろんのこと、鳥取大学が15年の歳月をかけて育種した秋栄(あきばえ)、鳥取県オリジナル品種で甘さの強い新甘泉(しんかんせん)、パンチの効いた酸味の強い新興(しんこう)など珍しい品種を中心に、現在育てている梨は20品種にもなります。

ありのみ倶楽部

前田さんの梨園に足を踏み入れると、梨の木の枝がアーチ状となり、ずっと奥まで並んでいます。そこに、日差しがやさしく差し込んでくる様子はとてもきれいで、太陽の恵みを受けて甘くなった梨が、ここで育っているのだと実感する時間でした。

ありのみ倶楽部の梨

梨のシーズンには、収穫した梨を選別して、直売所でお客様に販売する生産直売の農園です。ありのみ倶楽部さんの梨は、鳥取市が運営する「とっとり市」などを通じて、インターネットで購入することもできるので、毎年同じお客様が注文していただけることも多く、全国のお客様に鳥取の梨をお届けしています。

梨のかたちを変えるチャレンジ

梨園の中にある小屋には、すこし大きな機械が置いてあります。その機械はドライフルーツをつくるための乾燥機とのこと。シーズンにはたくさんの梨が収穫できるので、梨をあますことなくお客様にお届けしたいと思い、ドライフルーツにしています。

ほしなし

収穫した梨の皮をむいて、薄く切り、丸2日間機械の中で乾燥させてつくります。たくさんの梨を切って40時間も乾燥させてつくるので、実は意外と重労働。そんな手間をかけて手作りする「ほしなし」というドライフルーツは、梨の旨みが凝縮されていて、素材本来のおいしさを感じる味がします。

梨ジュース

前田さんはドライフルーツ以外にも、二十世紀梨が1玉まるごと入った梨のゼリーや、鳥取オリジナル品種「爽甘」 を絞った、梨100%のジュースを作っています。特別に試食させていただきましたが、どれも梨の風味が味わえるので梨好きには嬉しい商品でした。

梨ゼリー

今までお客様に届けることが出来ず廃棄していた小ぶりな梨や、大量に収穫できる時期に残ってしまう梨を加工することで、大切に育てた梨をあますことなくおいしく食べてもらいたい。それが生産者の素直な想いなのです。

これからも新しいなにかを求めて

ありのみ倶楽部

梨の加工品のすべての発案は、大生さんの父親である前田完治さん。完治さんがやりたいと発案したことを形にしていくのが、大生さんたちご家族のようです。「父はやりたいと言いだしたら、止まらなくなる人」と、すこし困ったような表情を見せる大生さんでしたが、ご家族で協力して、父親のやりたいことを、なんとか形にしていくために日々努力をされています。

ありのみ倶楽部さんでは、梨のほかにも、さくらんぼや桃を育てる観光農園の一面もあります。今年からはシャインマスカットも育てているとのこと。梨の選別をおこなっている倉庫の前には、土の色が新しい開墾中の畑もあり、これからも新しい果物を育てながら、多くのお客様に美味しさをお届けしていこうとしています。

ありのみ倶楽部

梨農家では収穫シーズンはもちろんですが、おいしい実がたくさんなるように、土づくりから、受粉、摘果、剪定など、年間を通じて多くの手入れが必要となります。そんな多忙の中、さらにお客様に喜んでいただけるものを提供しようとしている、前田さんご家族が営む「ありのみ倶楽部」。これからさらにどんな新しいことがはじまるのかとても楽しみです。

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