地域に根ざして、夏の名残の風物に。
こんな所に梨狩りができる果樹園が本当にあるのかな?
途絶える事なく車が走る環状8号線沿いを半信半疑で歩いていると、立ち並ぶマンションの先に緑の葉を茂らす樹々が連なっているのが見えてきて…あった!
世田谷区にある内海果樹園さんはこの地で先祖代々農業を営んでいらっしゃいます。野菜農家さんですが、収穫体験のために作っていたサツマイモの土地に、なにか新しい作物に挑戦したいと考え、平成6年から、梨と林檎の栽培を始めました。植え付けから5年で穫れるようになり、その後収穫量は増え続け、多くの人が楽しめるようになりました。都内では唯一の梨農園です。
梨の収穫は毎年8月の半ば頃から初まり、「幸水」「豊水」「秀玉」「長十郎」の4種類が順に熟れていき、9月の半ばまで収穫体験が出来ます。1ヶ月の短い旬ですが、この季節のイベントを都内で気軽に体験出来るため、来場者が後を絶ちません。特に自転車で来る人が多く、プールに行く前に立ち寄る家族の姿もあり、地元の人たちにとって毎年の楽しみになっているようです。
「試食をどうぞどうぞ〜」入り口ではスタッフの方の元気な声。
「食べたい食べたい!」と、来場者たち。これから収穫する梨に期待を込めて、一口。
「じゅわっ!」口の中で水分と甘みがはじけます。
果物は昼夜の寒暖差によって色づきます。東京は夜も蝉が鳴くくらい、寒暖の差がありません。
「見た目は産地のようにはなりませんが、味はのっています」
と内海さん。夜にスプリンクラーをつけるなど工夫をこらして栽培しています。
「あっまっ!」
「おいしーっ」
子供から大人まで、乾き潤す梨と夏の口福な出会いを口々に表していました。
輸送された果物はその間に水分が抜けてしまうので穫れたてに比べると美味しさは減ってしまいます。特に梨は水分量が大切ですから一番は穫れたてです。
もいだその場で皮のままガブリ。瑞々しさが口一杯に広がり、果汁がこぼれ落ちます!日本の夏に食べるなら、水気の少ない洋梨よりは、シャッキッとジューシーな和梨が合いますね。
梨の食べごろ見分けて、もぎとろう
「みーっけ!みーっけ!」
「おかーさん、あれとってー」
園内のあちこちで子供たちの元気な声。
収穫体験は農家さんとのお話しも楽しさの一つです。
熟している物を見分けるには?
「青々としたものから黄色に回ってきます。緑が薄いほうが熟れていて美味しいです。青い物でも、ざらざらした表面がツルツルしてきたものは食べごろです」
1本の木にも熟れている物とそうでない物がついているので、これぞという物を見つけに園内をぐるっと巡ってみましょう。
「幸水」は8月の中旬から。多汁で甘味が強く感じられ、目が粗く固め。
「豊水」は8月後半から9月初旬に。果汁が多く、やはり糖度が高くなる傾向にあります。
「秀玉」は9月上旬。酸味は少なく、多汁。全国的にあまり栽培されていない希少品種です。輸送にむいていないためあまり出回っていないそうです。
「長十郎」は「秀玉」につづいて9月中旬頃。幸水より固く、歯ごたえがあります。
どれも文句ナシ!の美味しさです。
梨はフレッシュが一番!美味しさを逃がさないためには?
「梨は生で!フレッシュが一番よ!」
試食用の梨を手際よく剥いているスタッフの方。
「飾り切りもあるけれど、手で触らない、体温を移さないのが美味しいですよ」
そう話している間に1つをあっという間に剥いてしまいました。皮は口に残るから剥いた方がいいそうです。
「子供には小さいサイズがいいわよ」
と、くし切りをさらに4つ程に切り分ける。ぱくっと一口。子供でなくとも、ついつい手が伸びてしまいます。
冷たくすれば美味しくなるとは限らないそうです。冷やしすぎると、甘みが抜けてしまいます。
「食べる1時間くらい前に冷蔵庫に入れるか、切ってから氷水につける、それくらいが一番いいですよ」
ほどほどの冷たさの方が甘みが飛ばず食べられます。どうしても美味しくない、味の乗っていない物はクランベリージュースで煮るといいそうです。
内海果樹園さんでは今年の収穫体験は8月14日から9月半ばまで。もぎたての美味しさ、食べるなら、今ですよ!
文・イラスト・写真/イラストライター、野菜コーディネーター ほしまさみ
【内海果樹園】
東京都世田谷区千歳台4-10
梨…8月14日(日曜日)~9月初旬の毎週日曜、祝日
林檎…8月14日(日曜日)~11月下旬の毎週日曜、祝日
開園時間:午前10時~午後3時(小雨実施)
参加方法:当日直接会場へ
料 金:1キロ1,000円(もぎ取りした梨・林檎を量り売り)
※駐車場はありませんので、車での来園はご遠慮願います。