松葉ガニの脱皮について学ぼう!

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「松葉ガニ」は脱皮で成長する!

滋養豊富な日本海で水揚げされる冬の味覚の王様「松葉ガニ」。ずしりと重い身入りのよさ、大きなハサミ脚をもつ立派な姿。濃い甘みと旨味は頬が緩む極上の味。この姿になるまでには長い年月がかかります。

節足動物は全て脱皮します。脱皮はただ殻を脱ぐだけではありません。古い殻の中から新しい身体で出たとき一回り大きくなっていまるのです。殻の中では何が行なわれているのでしょうか?

松葉ガニ黒点

身体の大きな「松葉ガニ」。寿命は約15年といわれます。食べられている大きなものは10年くらいのものです。隆々としたハサミ脚をもつ立派な姿になるためには命がけの脱皮を繰り返していることをご存知でしょうか?

殻の内側には細胞が並んでいます。この細胞は日々成長しています。古い殻の下に新しい柔らかい殻が形成され、新しい細胞が出来ます。脱皮の直前に新しくできた細胞は縦に分裂します。そして古い殻から皮を脱ぐように、大きく膨らみながら抜け出ます。柔らかい新しい殻は伸びるので、細胞は横長に大きくなるのです。

脱皮にかかる時間はおよそ1時間。途中、食べられてしまうもの、力つきて死ぬものもいます。丸ごと脱皮した後は一回り大きな姿になります。年に1回、秋に脱皮を行い、大きな姿へと成長していきます。

「松葉ガニ」は脱皮の時期で呼び名が分けられる

「松葉ガニ」は脱皮した時期により呼び名がちがいます。

脱皮したてでまだ甲羅が薄く、硬くなっていないものを「若松葉ガニ(=ミズガニ)」といいます。9〜10月に脱皮した後は松葉ガニと比べると大きさのわりには軽く、水分を多く含んでいます。

松葉ガニ生

この状態は約半年間続きます。1〜3月に水揚げされ、身入りは十分ではないながらも、みずみずしい甘みをもち、身の取り外しがよく安価で手軽に食べられるので、地元の人たちに親しまれています。脱皮は一生し続けるわけではなく、生涯最後の脱皮=最終脱皮があります。(最終脱皮まで9回〜13回の脱皮を繰り返します)

最終脱皮を終えるとハサミ脚が一気に太く大きくなります。この立派なハサミ脚こそが成熟したオスガニの証です。この最終脱皮を終えたものを「カタガニ」と呼びます。

松葉ガニ箱

最終脱皮直後(やはり殻は柔らかで身は水分が多い)の漁期を乗り越え、次の漁期まで生き残ったものは1年間かけて殻の厚さや堅さ身入りを増します。そして「松葉ガニ」というブランドネームがつけられるのです。

脱皮と再生

松葉ガニと人

生きていた年月に限らず、脱皮したての殻はブヨブヨと柔らかで、エネルギーの消耗により味ものっていません。脱皮を終えてその年の漁期も生き伸びれば、益々、身は充実していきます。最終脱皮後4〜5年は生きられますが、それ以前に、ほとんどが漁獲されてしまいます。

カニは成育最中になんらかの事故で脚を失う事や、外的から身を守るために自ら身体の一部を切り落とし(自切といいます)逃げることがあります。自切した瞬間に「瞬膜」という膜が断面にできます。

失われたハサミや脚は瞬膜の中で少しずつ再生され、次第に断面が盛り上がってきます。そして次の脱皮で、殻の下にできた新しいハサミや脚が付いた状態で脱皮します。残念ながら最終脱皮したカニは生えてきませんが、それでもカニの再生能力には驚かされますね。

松葉ガニ2杯

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