すべてに対する愛情の深さが美味しさにつながる/山本きのこ園 山本さんご夫妻

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山本きのこ園の舞茸

山本きのこ園

鳥取市国府町法花寺、田畑の広がる穏やかな風景の中にある「山本きのこ園」。舞茸を生産されている山本隆さんご夫妻を訪ねました。訪ねたのは5月の下旬。「舞茸と田植えが重なるこの時期が1年で一番忙しくてねえ」とおっしゃるや否やさっそく舞茸の生産工程を見せてくださいました。

山本きのこ園山本きのこ園

まずはきのこにとって畑の土と同じ役割の培地を作る〈培地室〉へ。培地は「おが粉」と「ふすま」を水で練って作ります。おが粉とは、いわゆる木屑でおがくずよりも粒子が細かいため菌が伸びやすく、ふすまとは小麦の外皮のことで、菌床に加えるのは菌のエサになるから。練り合わせたものをビンに詰めて殺菌すること7時間。そしていよいよ〈接種室〉で菌を植え付けます。〈芽出し室〉で舞茸の芽が出るのを待ち、〈栽培室〉でさらに10日育てます。

山本きのこ園山本きのこ園

栽培室に入ると湿度と舞茸の香りがすごい!「本当ですか〜?もう僕らは慣れてしまって何とも思いませんよ。でもよかった、やっぱり香りと歯ごたえが舞茸の美味しさですから。」と笑う山本さん。「それで、ここで妻とバトンタッチなんですわ。」収穫作業は奥様のご担当。梱包・出荷をお手伝いいただくスタッフの出勤前に収穫を終えるというから驚きです。菌床作り、収穫作業と、山本さんご夫妻の仕事は毎朝4時から始まるのです。

菌床を最後まで循環させる

舞茸栽培がこんなに長い道のりで、こんなにも手をかけられているとは驚きの連続でした。けれど、収穫後の菌床の旅はまだまだ続いていくのです!残った菌床は〈かき出し〉という作業を経て、瓶の中から取り出され、砕かれて良質な「肥料」になるのです。それも当然、おが粉にふすま、そして舞茸の菌という栄養満点の肥料です。

山本きのこ園山本きのこ園

山本きのこ園では近隣の方に差し上げているそうで、「少しはお役に立てているかなあ。」なんて謙遜される山本さんですが、実は少しどころではないんです。山本きのこ園の隣にはあらゆる野菜や果物そしてお花が気持ち良さそうに育っています。良質な肥料があるからこそ、何を育てても根がよく伸びるんだそう。

山本きのこ園

中でもいちごは近隣の幼稚園や老人福祉施設の方々が「イチゴ狩り」を楽しみにやってくるそうで、山本きのこ園の舞茸は素晴らしい地域貢献に繋がっているのです。「いいものだからね、菌床を無駄なく使い切りたいものね。」愛情が循環しているのです。

奥様と二人三脚で歩んできた21年

「21年間休みなしですわあ。」さらっとおっしゃる山本さん。「機械が壊れると修理に来てもらっても何日か止まってしまうから、いつも部品を手元に置いといて自分で直すんですよ。」それもそのはず前職はエンジニアで、21年前に、年をとっても雨でもできる施設栽培に挑戦されたのだそう。

山本きのこ園

お父様が椎茸の生産者で林産物に関わる仕事をそばで見てきたこともどこか影響しているのかもしれません。山本さんのお話の中で印象的なのが奥様のお話をされる時。とってもにこやかで嬉しそう。控えめな奥様にもお話を伺うと、「24時間一緒だからね。初めはぶつかったりもしてパートさんが笑ってましたよ。でもお互いにできんことを助け合ってやってるんかな。朝も早いけどお昼寝もしてるから〜。」と、苦労なんて全く感じさせません。

舞茸生産はもちろん、山本菜園とでも呼びたくなるような畑にもお二人の愛情溢れる作物がたくさん実っていました。最高の品質を保てるように、自分たちのできる量を守って作っているから・・すべてに対する愛情の深さが美味しさにつながる、ということを山本きのこ園で教わりました。

山本きのこ園

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