お茶碗にあふれる秋を。吹き寄せご飯
味覚、食欲、実り…と食にまつわる言葉が多々ある、食材豊富な秋。その季節の野菜を盛り込んだ「吹き寄せご飯」はちょっと特別な炊き込みご飯です。深まる秋にぜひお試しください。
「吹き寄せ」とは?
「吹き寄せ」とは、秋に色づいた紅葉や銀杏の葉や花びらが風に吹かれて散り、一カ所に寄せ集まった様子を表した言葉です。それは散り積もった赤や黄色の木の葉の美しさに魅かれた日本人の感性から生まれた言葉でもあります。
その「吹き寄せ」に見立てて、お菓子や料理でも秋の味覚や彩りをひとつに盛り込むことを「吹き寄せ」と言うようになりました。煮物や炊き込みご飯に吹き寄せられた、秋の食材からにじみ出た旨味は深い味わいを作ります。地味目な食材こそ風味が命です。吹き寄せご飯は淡い味のハーモニーが堪能できます。
秋の彩りを盛り込んで
吹き寄せご飯の具材は秋の味覚と彩りの良さで選びます。お茶碗によそった時、彩りよく、目で見て楽しいのがいいですね。銀杏や栗の黄色、人参の紅色、ごぼうの枯れ色、きのこの姿。手に入りやすい旬の物で季節感あふれるごちそうご飯になります。生の栗が手に入らない場合は甘露煮が便利です。黄色は栗の他にさつま芋、かぼちゃで代用を。ほっくりと甘みのある美味しさが生まれます。きのこは見た目の可愛いしめじや食感にアクセントの出る舞茸がおすすめです。また、旨味のもとになる具材をいれるのも忘れずに。油揚げは和食のベーコンともいわれています。秋鮭や鶏肉をいれると濃くが生まれ、主役級の炊き込みご飯になります。
素材の切り方にも工夫して、人参はいちょう切りに、油揚げは三角、舞茸はよくほぐすと落ち葉のイメージになります。ごぼうはささがきにすると枯れ草のようです。その中にしめじのきのこらしい姿が顔を見せ、秋がご飯の上で吹き寄せられます。
吹き寄せご飯の作り方
今回は新米と素材から出る旨味の持ち味を食べたい、ということで薄味にしました。ご飯の味がしっかりとついている方がお好みの場合はカツオ出汁で炊いてください。
材料
- 米 2合
- 水 300ml(水分量は調味料や野菜から出る水分があるので通常よりも控えめです)
- 昆布 5cm角
- しめじ 70g
- まいたけ 70g
- にんじん 80g
- ごぼう 30g
- 栗 8個〜10個(生栗または甘露煮)
- ぎんなん 8〜10個(缶詰めまたは殻付き)
- 油揚げ 60g(厚さが薄いものは1枚、厚いものは1/2枚)
●酒 大さじ2
●淡口醬油 大さじ1と1/2(淡口醬油を使うことでご飯が淡い色に炊きあがる)
●塩 小さじ2/3
作り方
〜下拵えをします〜
1.お米は洗って30分から1時間ざるにあけて水気をきる。
2.しめじは石突きを取り、小房にわける。まいたけも小房にわける。
小房に分けたしめじ、まいたけを合わせて、みりん小さじ1、醤油小さじ1を振りかける。
3.にんじんは皮をむいて厚さ2mmのいちょう切りにする。
4.油揚げは湯をかけて、油抜きをして、底辺1.5〜2cmの三角に切る。
5.ごぼうはささがきにして酢水に放ち、ざるに上げて水洗いをし、水気をよく切る。
6.栗は皮付きのまま、かぶるくらいの水を入れて火にかけ、沸騰後1〜2分茹でる。
鬼皮と渋皮をを剥く。(甘露煮の場合はそのままでよい)
7.缶入り銀杏はさっと茹でて臭みをぬく。
(殻付きの銀杏は封筒に入れてレンジで殻が弾けるまで加熱します)
〜炊きます〜
1.土鍋に水を入れる。
●の調味料を入れて溶かすように混ぜ、お米を入れる。
2.その上に昆布と栗、きのこ類、にんじん、ごぼう、油揚げを全体に広げてのせる。
3.強火にかけ、沸騰後弱火にし、15分炊く。
火を止めて銀杏を入れ、10分蒸らす。
4.蒸らし終えたら昆布を取り出す。底から返し全体をさっくりと混ぜる。
下拵えは多少の手間がかかりますが、それが終われば炊くだけです。具材をお米に混ぜて炊いてしまうと対流が悪くなりむら炊きになるので具はのせて炊いてください。にんじんや油揚げを紅葉型やイチョウ型に抜けば、おもてなしご飯になります。
季節の味を堪能できることほど仕合せなことはないですね。彩り鮮やかな炊き込み御飯でお腹の中からじんわりと秋を感じてはいかがでしょうか。
(文・写真/ほしまさみ)