生命力のかたまり「雑穀」
「雑穀」は荒地など、生育環境の悪いところでもぐんぐん育つため、荒々しい野性的なエネルギーを持っています。この穀物の“強い生命力”を日常的に摂ることで、病気に対する抵抗力を体につけるとも言われています。
基本的には1時間以上浸水させて、お米に混ぜて炊くだけ。毎日食べるものなので、その日の家族のみんなの体調に合わせて選んであげたいですね。気になる症状別に、陽性(体を温めるパワー)の強い雑穀から、ご紹介します。
基本的な雑穀の種類を学びます
アトピー性皮膚炎・・・ヒエ
縄文時代から食べられている日本で最も古い雑穀。稲作がはじまる前は主食として食べられていました。穀物の中で一番陽性が強く、体を芯から温めます。「もち種」でなく「うるち種」に限りますが、長期的に摂ることでアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患の改善効果もみられます。
気分の落ち込み・・・高キビ
高きびは「モロコシ」や「コーリャン」ともよばれ、世界中で栽培されています。ビタミンB群が特に豊富です。セロトニンの生成に関わるビタミンB群は不足すると、不安や落ち込みを感じやすくし、うつ病にも繋がるといわれています。
冷え性・・・アワ
ヒエと同じく、縄文時代から食べられていた雑穀。アワの特徴は、毛細血管を強くするビタミンEが豊富にふくまれていること。赤血球を柔らかく保ち、抹消まで血液を送り、結果として「冷え」を予防します。
肩こり・腰痛・・・ソバの実
ソバ粉の原形。ソバの実は穀物で唯一ルチンというポリフェノールをふくんでいます。ルチンは血管壁を強くし、血流を促進するので、肩こり、腰痛などの血行不良によるあらゆる不調を改善します。
便秘・・・押麦
大麦を蒸して平たくつぶしたもの。他の雑穀に比べて大きめで食べごたえがあります。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方をふくむ唯一の雑穀。重さの1割を食物繊維が占めており、便秘対策には欠かせません。糖の吸収を抑えるベータグルカンもふくまれているので、ダイエットにも最適。
PMS(月経前症候群)・・・キヌア
南米のアンデス原産のキヌアは栄養価が群を抜いて高いため、NASAの「宇宙食候補」にもなっているとか。キヌアには豊富なミネラルの他、植物性エストロゲンのひとつであるフィトエストロゲンがふくまれています。フィトエストロゲンは体内に入ると女性ホルモンと同じようなはたらきをするため、PMSや更年期障害の症状をやわらげるといった効果が期待できます。
貧血・・・アマランサス
アマランサスもキヌア同様、南米のアンデス原産。鉄分と葉酸が非常に豊富で血液中の赤血球数やヘモグロビン量を増やす働きがあります。またカルシウムとマグネシウムもバランスよくふくまれているので、骨粗しょう症予防にも一役買ってくれます。
シミ・そばかす・イボ・・・ハトムギ
ハトムギは「ヨクイニン」という名で漢方薬として昔からよくイボ取りに使われてきました。雑穀の中では若干陰性が強いので、梅雨から夏にかけての摂取がおすすめ。日焼け予防効果のあるパントテン酸も、最も豊富にふくまれています。
目の疲れ・・・黒米
黒米の色素は、実は黒ではなく紫。なので、陽性ではなく陰性に分類されます。紫の色素にはブルーベリーと同じくポリフェノールの一種、アントシアニンが豊富にふくまれています。抗酸化作用も高いので、体の“サビつき=老化”を防止する効果もあります。
雑穀はスローメディスン
現代医療の薬とは違って、雑穀は即効性がある薬ではありません。しかし、毎日続けることで健康な細胞の材料になり、根本的な治癒につながります。子どもは、自身が陽性のため、陰性寄りの穀物を好む傾向にあります。だからといって体を冷やすパンやうどんなどの小麦製品や、精白米ばかりを食べていると、不調が出てきます。風邪を引きやすかったり、落ち着きがなくなったり、集中力が続かなかったり。お母さんが毎日の食事でスローメディスンを処方してあげられたら、家族の体調管理もとても楽になりますね。
写真・文:岡本淳子(Aisha Beaute)