太陽の果実・旬の無花果(いちじく)を農家さんに学ぶ
愛知県は全国シェア一位を占めるいちじくの産地。いちじくが最盛期の9月上旬頃、大府市にある山口農園の山口茂樹さんの畑を訪ねました。山口さんは地元特産の木の山芋をはじめ、人参・玉葱・ブルーベリーなど、年間を通して数十種類もの野菜や果樹を育て、夫婦で長年農業を営むベテラン農家さん。あいち在来種保存会のメンバーの一員として伝統野菜の保存活動も行っています。
山口さんのいちじく畑は、周辺は、なだらかな小高い丘が連なり畑の向こうには真っ青な青空が一面に広がっています。いちじく達もお日様の日をたくさん浴びて気持ちよさそう。いちじくの香りがふんわり漂ってきます。
山口さんのいちじく栽培のこだわり
山口さんの「いちじくの木」はうねに沿ってきれいに木が並んでいます。これは左右2本に分けた主枝をまっすぐに伸ばす「一文字整枝」という仕立て方。がっしりとした太い主枝から結果枝(けっかし)という大人の背丈より少し高めの細い枝が数十cm間隔で上に向かって伸びています。いちじくは日当たりが大切。この栽培方法だと太陽の光をしっかりと浴びることができて、美味しいいちじくに育つそうです。
美味しいいちじくを選ぶ3つのポイントいちじくの枝には至る所に透明の傘のようなものが取り付けられていました。これは傘かけと呼ばれる、雨が直接いちじくの実に当たらないようにするためのものです。雨が当たると実が腐ったり、トマトみたいに一気に水を沢山吸うと実が割れちゃうからのだそうです。いちじくはおへそを上に向けているので、そこから水が入ると病気になったり腐りやすく、とてもデリケートな果物です。
いちじく農家の朝は早い・早朝に収穫しその日の午後には出荷
いちじくの収穫は8月上旬~11月上旬ごろまで。1日に「一熟」と毎日1個づつ熟するといわれているように、毎日の収穫作業は欠かせません。いちじくは熱に弱くてとってもデリケート。収穫作業は気温が低めの早朝5時過ぎから始め7時頃には終わらせ、作業場で仕分けと箱詰めをして午後には出荷します。
美味しいいちじくの見分け方
収穫のタイミングや見極め方のポイントを伺うと、市場に出回るタイミングを計算して完熟手前の状態で収穫・おしりの割れ具合や色づきと大きさ、それからヘタの部分の色を見ること。「熟してくると全体が色づいてきて、ヘタの部分に独特な透明感が出てくるんだよ」と山口さん。
まだまだ未熟ないちじくは緑色が強いのに比べて、熟しているものは確かにしっとりとした透明感がありました。これは毎日いちじくの成長を見守っている農家さんにしか気付けない事ですね。山口さんは、こうやって美味しいいちじくを選んで、私達に届けて下さっています。
畑で食べるもぎたて、いちじくの味
「今日は収穫しちゃったから、熟したのがここにはないけど」と、いちじくをひとつ山口さんがちぎってくれました。みんなで一緒にパクッ!口いっぱいに広がるいちじくの香り。まだちょっぴり酸味があって甘酸っぱい。完熟前とはいえもぎたてのいちじくは美味しい!
おすすめの食べ方はありますか?と聞くと、やっぱり完熟したいちじくを畑で食べるのが一番美味しいとのこと。もぎたての新鮮な無花果を食べられるのは農家さんの特権ですね!
私ももぎたての完熟いちじくを畑で味わってみたいな。まだまだ暑かった取材の日。秋晴れの空の下、畑で食べたいちじくはお日様の味がしました。
文・野菜ソムリエ/ナチュラルフードコーディネーター 桜井さちえ